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 奈緒子

2008年2月

奈緒子

  • 監督:古厩智之
  • 原作:「奈緒子」(作・坂田信弘、画・中原裕、小学館刊)
  • 脚本:林民夫、古厩智之、長尾洋平
  • 出演:上野樹里、三浦春馬、笑福亭鶴瓶
  • 配給:日活

2007年 日本映画 120分

九州にある小さな島の高校の、陸上部の駅伝合宿を中心に描かれている、コミックから生まれた映画です。

タスキをつなぐ仲間として、先輩後輩として、ライバルとして、異性として、師から学ぶ者として、微妙な思いが交錯する高校生の心を、若い出演者たちがていねいに表現しています。マラソンや駅伝がおなじみとなってきた今、自分をしっかり持ちながら、他者をも生かして一つになってことを成し遂げていく姿は、見る者の心にさわやかな風を吹き込んでくれます。仲間との関係の中で、大きく成長していく高校生たちを取り上げた、さわやかな感動ドラマです。

物語

12歳の奈緒子は、喘息の治療のために両親とともに、長崎県波切島に滞在していた。奈緒子は、その島で、いつも走っている少年を目にしていた。ある日、釣船に乗せてもらった奈緒子は、風に飛んだ帽子を取るために、海に落ちてしまう。海に飛び込んだ船長は、奈緒子を船に乗せた後、突然の大波に襲われ帰らぬ人となる。それは、奈緒子が目にしていた走る少年・雄介の父だった。

船長の家にお線香を上げに行った奈緒子は、雄介から「お父ちゃんを返せ!」と怒鳴られる。それ以来、奈緒子の心には、罪意識に苦しむ。

東京の高校で陸上部に所属している奈緒子(上野樹里)は、高校生の陸上競技大会を手伝い、そこで雄介(三浦春馬)に会う。彼は、「日本海の疾風かぜ」と呼ばれ、天才ランナーとして高校陸上界で話題になっていた。

奈緒子は恐る恐る雄介に近づき自分のことを名乗るが、雄介は「もう忘れた。だれも、恨んではいない」と冷たく言い、奈緒子を避けるように去っていった。

奈緒子

九州オープン駅伝で雄介が走ると知った奈緒子は、九州へと旅立つ。雄介の高校のメンバーが足りないことから、奈緒子は補給水を手渡す係を手伝うことになる。雄介はすばらしい走りで追い上げていたが、水を差し出す奈緒子を見たとたん動揺し、水に手を差し出さずに走り抜けてしまった。その姿に、奈緒子は呆然とし、雄介がまだ自分を許してくれてはいないことに悲しみを深くする。水を飲まなかった雄介は脱水症状を起こして途中で倒れ、タスキをつなげることができなかった。陸上部の顧問・西浦(笑福亭鶴瓶)は「駅伝は一人で走っているのはない」と、雄介の行動を叱責する。

奈緒子

あの事故のことを知っており、今まだ二人の心に大きなわだかまりが残っていることを知った西浦は、二人のためにあることを思いつく。

奈緒子

 

 

若手の実力派として存在感のある女優の一人・上野樹里さんがヒロインです。樹里さんは、見ていて気持ちのいい女優さんです。「スウィングガールズ」「のだめカンタービレ」などで、元気で自由奔放な女子学生を演じてきたのですが、「奈緒子」では、自分をおさえ影を持った、しかし芯のあるおとなしい女の子を表現しています。彼女の実年齢は20歳を過ぎているのですが、年齢よりも若く見える1990年生まれの三浦春馬君と演じていて違和感がないのは、彼女が持っている純粋さからでしょうか?

笑福亭鶴瓶さんは、陸上部の顧問としては体型がちょっと合わないのでは……と思ったのですが、部員たちを思う愛情深い顧問として、しんみりさせる場面もあって適役でした。

頼りないような陸上部の仲間たちはそれぞれ個性的で、人間は一人ひとりすばらしい存在だということを、若者を代表して表現してくれているようでした。

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