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お薦めシネマ
アイム・ノット・ゼア
2008年4月
I'M NOT THERE
- 監督:トッド・へインズ
- 脚本:トッド・ヘインズ&オーレン・ムヴァーマン
- 出演:クリスチャン・ベイル、ケイト・ブランシェット、
マーカス・カール・フランクリン、リチャード・ギア、
ヒース・レジャー、ベン・ウィショー、
シャルロット・ゲンズブール - 音楽スーパーパーザー:ランダル・ポスター、&ジム・ダンバー
- 配給:ハピネット、デスペラード
2007年 アメリカ映画 138分
- 第64回ヴェネチア映画祭主演女優賞、審査員特別賞受賞
- 第80回アカデミー賞助演女優賞ノミネート
- 第65回ゴールデングローブ賞助演女優賞受賞
伝説のトップ・ミュージシャン、ボブ・ディランは、66歳を迎えた2007年にデビュー45周年を迎えまいた。そして「ボブ・ディラン・イヤー」が開催されました。映画「アイム・ノット・ゼア」は、彼の人生を6つの時代に分けて各々を6人のキャストが演じた、とてもユニークな構成の映画です。
6人のボブ・ディランを紹介しましょう。
詩人:アルチュール(ベン・ウィショー)
映画の進行役として登場します。尋問を受け、それに答えるようにして、自分の人生を思い出して語っていきます。「アルチュール」という名は、ボブ・ディランが影響を受けた19世紀のフランスの詩人、アルチュール・ランボーから取った名です。
(C) 2007 VIP Medienfonds 4 GmbH & Co.KG/All photos-Jonathan Wenk
無法者(アウトロー):ウディ(マーカス・カール・フランクリン)
1959年、11歳の黒人少年ウディは、ギターを抱えて貨物列車に飛び乗り、すでに乗っていた人々に自分の人生を語りはじめます。白人の女性に救われたウディは、彼女の家に集まった人々に大人の口調で話します。彼を天才ギター少年と騒ぐ人々に向かって、ウディはハリウッドでデビューする夢を語りますが、そのとき少年鑑別所から電話がかかってきます。少年は、鑑別所を脱走したのでした。デビュー前のボブ・ディランは、黒人ブルース歌手の曲をコピーしてうたっていました。
革命家:ジャック(クリスチャン・ベイル)
1960年代前半、プロテスト・フォークの世界に、ジャックという名の新人が登場します。“新しい時代の声”として活躍しますが、JFKを殺害した犯人に対する発言で人々の反感をかったジャックは、人々の前から姿を消します。20年後、ジョン牧師と名乗っていたジャックは、集まった信者たちの前で、ゴスペルを力強くうたいはじめます。
映画スター:ロビー(ヒース・レジャー)
1965年。ベトナム戦争が本格化した時です。新人の俳優ロビーは、映画「砂の粒」に主演しました。ロケ先で出会った美大生クレア(シャルロット・ゲンズブール)と語り合い、やがて結婚します。2人は2人の子どもに恵まれますが、俳優として成功していくロビーと子育てに追われるクレアとの間には、次第にズレが生じてきます。
1973年、ベトナム戦争から米軍が撤退したというニュースを見たクレアは、離婚を決意します。
ロックスター:ジュード(ケイト・ブランシェット)
1965年、ジュードは、フォーク・ソングからロックンロールへと転向します。観客はがっかりしますが、自分の進む新しい音楽の道に確信を得ていたジュードは、ロンドンへ向かいます。ドラッグ、睡眠不足、周囲から理解されない孤独感、ジュードは精神と肉体を壊していきます。
(C) 2007 VIP Medienfonds 4 GmbH & Co.KG/All photos-Jonathan Wenk
放浪者:ビリー(リチャード・ギア)
西部の町の人里離れた小屋で犬と暮らすビリーは、町の住民たちが30日以内に立ち退くよう命令されていることを知ります。近くにハイウェイができるというのです。ビリーの言葉に力を受けた町の人々は、環境と自分たちの生活を守るため立ち上がる。牢屋に入れられたビリーは、脱走を図りギターを抱えて貨物列車に飛び乗ります。
個性豊かな6人の俳優が演じるボブ・ディランは、名前も違うので、まったく別人の人生のように見えますが、話が進むにつれて一人となり、彼の豊かな才能の表現であることが分かってきます。この6人は入り交じって出てきますので、一瞬も目が離せません。その中で、アカデミー女優であるケイト・ブランシェットがカッコよく、時代の寵児となったボブ・ディランの狂気的な苦痛と孤独、仲間を思う気持ちをみごとに演じています。