お薦めシネマ
同窓会
2008年8月
- 監督・脚本:サタケミキオ
- 原作: サタケミキオ著『愛について考えてみないか』(講談社刊)
- 音楽: 矢田部正、西田和正
- 出演:宅間孝行、永作博美、鈴木砂羽
- 配給:エスピーオー
2008年 日本映画 105分
演出・脚本・出演する劇団主宰者のサタケミキオが初めて監督した映画「同級生」。そこで主人公を演ずる宅間孝行は、俳優としてのサタケミキオです。
ちょっとした勘違いが重なって、人生は思いもよらぬ方向へ歩き出す。どこからズレが生じたのか……。仕事に追われている毎日の生活から離れ、今まで歩いてきた道をふっと思い、これからどう生きたいのかを考えさせられるときが、人生のどこかにはあります。そんな人生を見つめる“とき”を、等身大の生活の中で描いている作品です。人生をそれなりに思うように生きてきた40歳を前にした男性と、そんな彼をさりげなく受け入れている妻、二人を見守っている友人たちの心温まるドラマです。
物語
東京で映画会社を起こし、映画プロデューサーとして成功していた南克之(宅間孝行)は、妻・雪(永作博美)との間に子どもはいず、関係がさめていた。若手女優と不倫関係にあった克之は、雪に離婚を申し出、雪はあっさりと受け入れた。中学からの同級生で今は出版社で働く雪の親友・石川えり(鈴木砂羽)は、裏切った克之への怒りを現さない雪を心配し、本当にそれでいいのかと問うが、雪はこだわっていないようだ。二人の離婚を知った克之と雪の故郷の友人たちは、克之に怒りを感じていた。二人は高校のときの同級生で、えりをはじめ、他の同級生といつも一緒だった。
えりに励まされながら、一人で生きる道を歩きはじめた雪に、体の異変が起きる。
仕事の関係で故郷・長崎に帰ってきた克之は、実家の部屋で、高校生のころに映画監督を夢見ながら撮影し続けた8ミリフィルムや、渡すことはなかった初めて書いたラブレターを見つけ、若かったころを思い出す。
高校の映画研究会に所属していた克之は、水泳部の雪にあこがれ、部室の窓から隠し撮りをしていた。しかし雪はいつも中垣という男子生徒と一緒だったので、なかなか思いを告白することができなかった。それでも縁日の夜や海辺に二人で行ったことがあった。しかし、本心を打ち明けられずに卒業してしまった。数年後の同窓会で久しぶりに出会ったことから交際が始まり、二人は結婚した。しかし、中垣からもらった万年筆を大事にしている雪を見るにつけ、克之は、雪の心の中は、中垣でいっぱいなのではないかという不信がふくらんでいった。
映画制作が暗礁に乗り上げ、映画会社倒産の危機にぶつかった克之のもとへ、えりから電話が入った。雪が病気になり、後少しのいのちだというのだ。思い出すのは、あのきらきらと輝く雪の笑顔だった。「それにしても雪はなぜ、離婚を簡単に受け入れてくれたのだろう……」克之は、雪の病院へと向かった。
主人公が映画プロデューサーという設定だからでしょうか、随所に入るスチール写真のような静止画が、とても効果的に使われています。カラーとモノクロを使用することにより、高校時代と結婚のころ、そして現在と、時代が交錯していきます。
勝手な勘違いが生み出す笑いと涙。人とのかかわりのうれしさ、心やすさを感じる映画です。
最後に、すべての勘違いの糸をほどくような、あっと驚く事実があります。お楽しみに!