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 おくりびと

2008年9月

おくりびと

  • 監督:滝田洋二郎
  • 脚本:小山薫堂
  • 音楽:久石譲
  • 出演:本木雅弘、広末涼子、山崎努、余貴美子
  • 配給:松竹

2008年 日本映画 2時間10分

  • 第81回米国アカデミー賞外国語映画賞受賞
  • 第32回モントリオール国際映画祭グランプリ受賞
  • 第33回報知映画賞作品賞邦画部門受賞
 

公開前からマスコミ関係でも評判になっている映画です。さらに第32回モントリオール国際映画祭で、グランプリを獲得しました。

遺体を棺に納める仕事をする「納棺師」がこの映画の主人公です。死者を天国へ送り出すための大切な行為で、死者にたいしも遺族に対しても、大きな働きをしていますが、忌み嫌われる仕事でもあります。日本独特の死生観を正面から取り上げた「おくりびと」は、国際映画祭でグランプリを受け、海外でも認められました。

カメラは納棺を舞台の上で行われる儀式、見守る遺族は舞台を見る人のように撮っていきます。「モッくん」こと本木雅弘の美しく一本気な姿が、この映画のすばらしさを高めていると思います。さらに職場の山崎努と余貴美子の存在が、軸となる本木・広末夫婦のやりとりに、味わいを与えています。

物語

オーケストラのチェロ奏者だった大悟(本木雅弘)は、突然の解散宣告を受け、大金をはたいて買ったチェロも手放し、東京から故郷の山形に帰った。妻・美香(広末涼子)も仕事を辞め、二人は空き家になっていた喫茶店だった実家に住み、大悟は求人広告を頼りに職探しをはじめた。

条件のよい「旅のお手伝い」という広告を見つけ、事務所を訪ねた。棺桶が立てかけてある殺風景な事務所にいたのは、おいしい紅茶に目がない事務員(余貴美子)だった。やがて帰ってきた社長の佐々木(山崎努)は、大悟をひとめ見て採用を決める。しかしその仕事は「旅のお手伝い」ではなく「安らかな旅立ちのお手伝い」だった。

おくりびと
(c)2008映画「おくりびと」製作委員会

佐々木の勢いに押され、翌日から働くことになる。美香には、冠婚葬祭関係の仕事と説明した。大悟は佐々木に連れられ、次々と納棺の仕事に連れられていく。そこにはさまざまな家族の姿があった。最初は戸惑いばかりだったが、やがて大悟は、納棺の式が、遺族にとって大切なときをもたらしていることに気がついていく。ときには、警察から処理を頼まれる遺体もあり、苦しいこともあるが……。

おくりびと
(c)2008映画「おくりびと」製作委員会

そんなときに、美香に仕事が納棺師であることがばれる。美香は、「さわらないで、けがらわしい!」と言って実家に帰ってしまう。小さいときには父親が失踪した大悟は家族を大切にしようと思っていたので、美香がいなくなったことはショックだが、仕事を辞める気はなかった。死者のために誇りを持って納棺の仕事をしていく大悟の所作は美しく、遺族に大きな慰めを与えるようになっていた。

そして、30年間行方知れずだった父の死が知らされた。

おくりびと
(c)2008映画「おくりびと」製作委員会

 

 

納棺師をはじめ、昔から死体に携わる仕事はいやしい職業として差別されてきました。「子どもに胸を張って言える職業か……」この映画でも、最初は妻や友人から反発を受けます。しかし、死者を葬るための業の大切さを悟った大悟の遺体に対する尊敬の念が、妻や友人、遺族の認識を変えていき、すばらしい儀式として昇華しました。

死はだれにも来るもの。送る立場からいつか送られる立場になります。このようにていねいな死への旅たちの儀式をとおして、人間が必ず通る「死」を客観的に見る機会を与えてくれました。焼き場で働く人が語る「死は門であり、わたしは門番だ」ということばがすべてを表していると思います。死ですべてが終わりではない、今までとは違う道へのはじまりだということを示しています。

死についてだけでなく、自分が、今携わっている職業について、父や母、家族について、職場で家庭で地域での人とのかかわりについて、いろいろな面から考えさせられる作品です。

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