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 大阪ハムレット

2009年1月

大阪ハムレット

  • 監督:光石富士朗
  • 原作:森下裕美『大阪ハムレット』
       (双葉社刊、「漫画アクション」連載作品)
  • 出演:松坂慶子、岸部一徳、久野雅弘、森田直幸、
       大塚智哉、加藤夏希、白川和子、本上まなみ、
       間寛平
  • 支援:文化庁
  • 配給:アートポート

2008年 日本映画 107分

  • 第21回東京国際映画祭 日本映画・ある視点 特別賞受賞(岸部一徳)
 

「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ!」
大阪の下町に住む久保家の3兄弟は、それぞれに悩みを抱えている。ある日、突然お父ちゃんが死んだ。通夜の席で、近所の人々は、酒飲みのお父ちゃんを悪く言っていた。悲しみに肩を落として祭壇の前に座っていたお母ちゃんは、それを聞いてクッと立ち上がった。どうする??? しかし母ちゃんは「そうやな、ひどい父ちゃんやったなぁ」と、明るく笑い飛ばす。

これが、われらの母ちゃんや!! 学校でのいじめや、人生の悩みを「生きとったら、それでええ!」と、笑顔で吹き飛ばし、ありのままの自分、ありのままの相手、ありのままの日常を受け入れていく。松坂慶子演じる肝っ玉かあさんと岸部一徳の変なおっちゃん、3人の名子役が演じる兄弟が暮らす久保一家の、元気の出るお話です。

物語

長男の政司(久野雅弘)は中学3年生。なよなよとしていて若さがなく、そうとうに老けて見える。ある日、大学生の由加(加藤夏希)に道を尋ねられ、その美しさにポーッとする。側溝に落ちそうになった由加を助けたことから、大学生といつわってデートをするようになるが、彼女が教生として政司のクラスにやってきて年齢がばれてしまう。恋はこれで終わりか……と思いきや、由加からは「わたしのお父ちゃんになってほしい」と言われ戸惑うが、そんな由加をやさしく包み込む。

大阪ハムレット

 

次男の行雄(森田直幸)は、つっぱっている中学一年生。ひ弱な担任の先生の言葉につっかかり、肩で風を切って粋がっている。ある日、担任から「久保くんは、ハムレットはやなぁ」と言われたことから、「ハムレット」を読み始める。難しい内容だが、図書館から分厚い『ハムレット』の本を借り、辞書を引きながら読み進めてる。お父ちゃん(間寛平)の死後、お父ちゃんの弟と名乗るおっちゃん(岸部徳一)が同居するようになり、家のことをしてくれる。ほどなくお母ちゃんが妊娠し……。「わしの家はハムレットのとこと一緒か!?」と怒り出す。

大阪ハムレット

 

三男の宏基(大塚智哉)は、目の大きなオカッパ頭の小学生。「将来なりたいこと」を作文に書くように言われ「女の子になりたい」と発表すし、クラスのみんなにからかわれる。そんな彼を力づけてくれるのは、お母ちゃんの妹で、不治の病で入院中のあきちゃん(本上まなみ)だ。あきちゃんは宏基にお化粧をしてくれ、通販で買ったフリルのドレスを見せてくれる。しかしそのドレスを着ることなく息を引き取る。学芸会で「シンデレラ」をすることになり、宏基はまわりの女の子たちからシンデレラ役に推薦される。王子さま役は、宝塚を目指す女の子だ。女の子になれてうれしい宏基のために、お母ちゃんはあきちゃんのフリルのドレスを仕立て直してくれた。

宏基の学芸会の日、久保一家はそろって宏基の学校へ向かう。シンデレラが登場すると、「あれは、男の子や!」と観客席からやじが飛ぶ。その声に耐えきれず、そでに引き下がった宏基は……。

 

3兄弟が、ときどき川の堤防に行き、話し合う姿が印象的です。宏基が「女の子になりたい」と、突拍子のないことを言っても、「お前は、変だ!」とからかったり否定したりせず、「自分らしく生きなさい」と応援してくれるあきちゃんだけでなく、おばあちゃん(白川和子)が女の子の浴衣を着せてくれたり、クラスの女の子たちもその思いを認めてくれたり、お母ちゃんも「宏基、きれいだよ」と言って肯定してくれます。政司は、由加の心の傷を癒やし、行雄は『ハムレット』を読破します。「自分は自分のままでいいのだ」。

映画を見ながら、わたしは、わたしのよさやわたしの感じていることを、自分で認めているだろうか、他人の評価や思惑を気にしすぎていないかと、自分を見つめ直していました。

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