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 子供の情景

2009年4月

Budda Collapsed out of Shame

子供の情景

  • 監督:ハナ・マフマルバフ
  • 脚本:マルズィエ・メシュキニ
  • 製作:メイサム・マフマルバフ
  • 音楽:トリブ・カーン・シャヒディ
  • 出演:ニクバクト・ノルーズ、アッバス・アリジョメ
  • 配給:ムヴィオラ、カフェグルーヴ

2007年 イラン=フランス合作映画 1時間21分

  • 2007年サンセバスチャン国際映画祭審査員賞
  • 2007年ローマ国際映画祭ユニセフ賞
  • 2007年モントリオール世界映画祭<革新の映画>賞
  • 2007年テサロニキ国際映画祭<女性と平等の機会>賞
  • 2007年東京フィルメックス映画祭出品
  • 2008年ベルリン国際映画祭クリスタル・ベア賞/<平和映画>賞
  • 2008年モロッコ国際映画祭特別審査員賞
  • 2008年東京国際女性映画祭出品
 

1988年、イランのテヘランで生まれたハナ・マフマルバフは、イラン映画の巨匠と言われるモフセン・マフマルバフ監督の次女として、小さいときから英才教育を受け、映画の才能を開花させました。8歳で学校教育に分かれを告げ、姉のサミラや兄メイサムとともに、父が設立したマフマルバフ・フィルム・スクールで学び始めました。

8歳のとき、初めて撮影したビデオ短編「おばさんが病気になった日」をロカルノ国際映画祭に出品し、日本でも、2002年に父マフマルバフ監督の「アフガン・アルファベット」が公開されたとき、同時上映されました。

2003年、サミラが「午後の五時」を撮影した際、メイキングとして製作した長編ドキュメンタリー「ハナのアフガンノート」が、ベネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され話題を呼びました。(「午後の五時」は、カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞しました。)

映画一家として知られているマフマルバフ一家ですが、この「子供の情景」でも、写真家となった兄メイサムがプロデュースを、母親のマルズィエ・メシュキニが脚本を手がけています。

2006年、ハナが18歳のときにアフガニスタンで撮影をはじめた「子供の情景」は翌年完成し、サンセバスチャン国際映画祭での審査員賞受賞をはじめ、多くの映画祭で受賞を果たしています。

 

物語

6歳の少女バクタイ(ニクバクト・ノルーズ)は、となりに住む男の子アッバス(アッバス・アリジョメ)が学校に行き、家に帰ってきては学校で習ったお話を読む練習をしているのを聞いて、自分も学校に行きたいと強く思うようになった。アッバスから、学校に行くためにはノートと鉛筆が必要だと聞いたバクタイは、町に出かけた母親から弟の子守りを頼まれているにも関わらず、母親を見つけるために弟を家に残して町に出かける。しかし、母親を見つけることはできなかった。砂漠の真ん中にある雑貨屋で、鉛筆とノートの値段が20ルピーだと教えてもらう。20ルピーを得るため、バクタイは卵を売ってお金を作ることにする。

子供の情景

しかし卵はなかなか売れない。町の雑踏の中を歩き続け、卵を落として悲しい思いをしながらもバクタイはへこたれない。やっとの思いで10ルピーを手に入れたが、鉛筆とノートの両方を買うことはできない。鉛筆にはお母さんの口紅を使うことにして、ノートだけを買った。

うれしいバクタイは喜びいさんで学校に行くが、そこは男の子だけの学校だった。女の子の学校は川の向こうだと、教師から追い払われてしまう。

子供の情景

川向こうに向かう途中、バーミヤンの破壊された仏像の前で、遊んでいる男の子たちに取り囲まれる。彼らはバクタイの大切なノートを奪い取り、破って紙飛行機を作って空に飛ばしてしまう。戦争ごっこをする男の子たちに「女の子は勉強をしてはだめだ!」「髪の毛を見せている女は石打の刑だ!」と紙袋をかぶせられ、連れ回される。アッバスが探しに来てくれたが、アッバスは泥沼に落とされてしまう。男の子たちに連れて行かれた洞窟には、バクタイと同じように紙袋をかぶせられた女の子たちがいた。

子供の情景

洞窟から逃げたバクタイは、やっとの思いで川向こうの女の子たちの学校に着く。小さな教室では、女の子たちが勉強していた。しかしそこには、バクタイのためのイスはなかった。どうしたらイスを手に入れることができるのか。バクタイはあきらめない。

 

映画は、世界的に重要な洞窟、バーミヤンの仏像が破壊される場面からはじまります。ハナは、近くの洞窟で暮らす子供たちの生活をとおして、戦争の愚かさ、子供たちの教育の重要性を、鋭い視線で端的に訴えています。ハナのメッセージの確かさ、表現力のすばらしさがあふれる心に残る作品です。

子供の情景

戦争ごっこの男の子たちに追いかけられるバクタイに向かって、「死んだふりをするんだ! 死ねばほっておいてくれる。自由になりたいのなら、死ね!」と叫ぶアッバスの言葉が心に残ります。


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