お薦めシネマ
真夏の夜の夢
2009年7月
A Midsummer Okinawan Deam
- 監督・脚本:中江裕司
- 脚本:中江素子
- 原作:ウィリアム・シェイクスピア
- 出演:柴本幸、蔵下穂波、平良とみ、平良進
- 配給:オフィス・シロウズ、シネカノン、パナリ本舗
2009年 日本映画 1時間45分
沖縄に住み、沖縄を舞台とした映画を制作している中江裕司監督の最新作ができました。「ナヴィの恋」「ホテルハイビスカス」で、人の心の温かさをわたしたちに教えてくれた中江監督は、今回はシェークスピアの「真夏の夜の夢」を土台としたファンタジー映画で、人間をずーっと守っているキムジン(精霊)という守り神が登場します。
平良とみ、吉田妙子ら、沖縄の名女優のおばあたちをはじめ、沖縄の俳優さんたちが温かい存在で心をなごませます。ゆったりと心おだやかに生きている沖縄の魂を味わってください。
物語
世嘉冨(ゆがふ)島。森の中には、島の守り神である精霊(キジムン)たちが、物語を歌っている。キジムンたちは尋ねる。「人間はなぜ、すぐに忘れてしまうのか」。森の奧の大きな木の枝にすわっているキムジンの王タンメー(平良とみ)と后(平良進)は、美しい衣を身につけて、「忘れないと生きていけないからだろう」と答えた。
小さな島に、美しい娘が帰ってきた。東京で不倫の恋に敗れたゆり子(柴本幸)だ。島の青年たちは、村長の息子の結婚式のために、村に伝わる芝居の稽古をしていた。それは、村のリゾート開発で大もうけをしようとたくらんだ村長が仕組んだ、政略結婚だった。ゆり子の姿を見た青年たちは、彼女を芝居のヒロインにしようと招く。それまでやる気を失っていた青年たちは、美しいゆり子の出現に、がぜんエネルギーを出しはじめた。
そこへ、ゆり子の不倫相手の恋人がゆり子を追ってやってきた。と思うと、彼の妻が、追ってやってきた。ゆり子の帰郷とともに、島は大騒ぎとなる。
どうしていいかわからないでいるゆり子の前に、マジルー(蔵下穂波)が現れた。「だれ?」幼いころ、ゆり子は人には見えないマジルーを見ることができ、友達になったのだ。しかし、ゆり子は島から出て暮らすうちにマジルーの存在を忘れてしまっていた。久しぶりにゆり子を見つけたマジルーは大喜び。彼女のために何かしようと、一生懸命になる。
(C)2009「真夏の夜の夢」パートナーズ
村長の息子の結婚式の日がやってきた。しかし、政略結婚をいやがった花嫁は、村長の馬鹿息子のもとから逃げてしまい、ゆり子は逃げた花嫁の身代わりにされてしまう。
島の住人全員が集まってきた結婚式で、マジルーは島の人々を祝福する役目があった。マジルーの思いを知ったゆり子は、村人たちをしあわせにするために、マジルーと力を合わせる。
「いつでもそばにいたさ。おまえが気づこうとしなかっただけ。いつでも、どこでもゆり子のしあわせを願っているよ。」この精霊マジルーのことばは、イエスのことばと同じ、わたしたちを安心させます。いつも一人ひとりを守ってくれる者の存在は、昔から野山に囲まれて生きてきた日本人が持っていた感覚ではないかと思います。現代人が無くしてしまった感覚は、今も沖縄の深い森の中に生きています。森と精霊の存在と、柴本幸さんの美しい長身とのびのびと動く手足に“自由”を感じ、しあわせな気持ちになる作品です。