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 戦場でワルツを

2009年10月

WALTS WITH BASHIR

花と兵隊年

  • 脚本・監督・製作:アリ・フォルマン
  • 美術監督・イラストレーター:デイヴィッド・ポロンスキー
  • アニメーション監督:ヨニ・グッドマン
  • 音楽:マックス・リヒター
  • 出演:ボアズ・レイン=バスキーラ、オーリ・シヴァン、
        カルミ・クナアン、ロニー・ダヤグ、シュムエル・フレンケル、
        ロン・ベン=イシャイ、ドロール・ハラジ、ソロモン博士
  • 配給:ツイン・博報堂DYメディアパートナーズ

2008年 イスラエル・ドイツ・フランス・アメリカ合作 イスラエル映画 90分

  • アカデミー賞外国語映画賞ノミネート
  • ゴールデン・グローブ賞最優秀外国語映画賞
  • セザール賞最優秀外国語映画賞
  • 英国インディペンデント映画賞最優秀外国語映画賞
  • 全米映画批評家協会賞最優秀作品賞
  • 東京フィルメックス最優秀作品賞 他、多数受賞
  • イスラエルアカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞、最優秀美術賞、最優秀編集賞、最優秀音響賞
 

2009年度アカデミー賞外国映画賞にノミネートされた作品です。映画「戦場のワルツ」のチラシに、「アニメーション・ドキュメンタリー」とありました。ドキュメンタリーをアニメーションで描くとは、どういうことなのかしら……、アニメーション自体が作り物なのに、事実を追っていくときにどこまで真実性を出せるのかしら……、と思いました。しかし、見ていくうちに、人間の深い闇の部分を描くには、実写のドキュメンタリーより、アニメーション・ドキュメンタリーのほうがより深く表現できるのでは……と思うようになりました。

アリ・フォルマン監督は、ご自分の体験を「アニメーション・ドキュメンタリー」にしました。登場する人々は、イスラエル軍の元兵士たちです。アリ・フォルマン監督は、古い友達のボアズ・レイン=バスキーから、相談を受けました。凶暴な犬の群れに追いかけられる苦しい夢を見るんだと打ち明けられます。ボアズはレバノン戦争に従軍し、そのとき、上官の命令で何頭もの犬を虐殺したのでした。アリ監督はボアズの話を聞きながら、不思議な感覚に襲われます。アリとボアズは、ともにレバノン戦を戦ったのですが、アリには、そのときの記憶がないのです。自分も体験しているはずなのにと、そのときのことを思い出そうとしていたアリは、その夜、不思議な夢を見ました。照明弾で照らされた、明るい夜の海に、自分と友達が漂っていました。衣服は身につけていませんでした。二人は浮かんだまま海辺にある高層ホテルに近づいていき、砂浜に来ると立ち上がって歩き出すという夢でした。これは、何を意味しているのでしょう。

戦場でワルツを
(C)2008 Bridgit Folman Film Gang, Les Films D'ici, Razor Film Produktion,
Arte France and Noga Communications-Channel 8. All rights reserved

 

アリは、臨床精神科医の友人オーリーに勧められ、記憶を取り戻すために戦友を訪ねて世界を旅することにしました。驚いたことに、戦友たちはそれぞれ不思議な夢を見ていました。友人たちの記憶をつないでいったアリは、当時は理解できなかった衝撃的な事実と出会うことになります。

戦場でワルツを
(C)2008 Bridgit Folman Film Gang, Les Films D'ici, Razor Film Produktion,
Arte France and Noga Communications-Channel 8. All rights reserved

 

命じられるままに戦場に送られた10代の若者たちにとって、非人間的な戦争体験はその後の人生に大きな影響を与えます。自分たちが荷担してしまった戦争。その意味をしっかりと見つめるには、時が必要だったのでしょう。

イラク戦争に参加した米兵たちの心の傷を描いたドキュメンタリー番組など多々ありますが、アニメーションだからこそ表現できたことがあると、この映画を見て思いました。

最後のシーンが印象的です。アニメーションによる表現の映像を、ぜひご覧ください。


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