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 牛の鈴音

2009年12月

ウォナンソリ Old Partner

牛の鈴音

  • 監督・脚本・編集:イ・チュンニョル
  • 出演:チェ・ウォンギュン、イ・サムスン
  • 配給:スターサンズ・シグロ

2008年 韓国映画 78分

  • 第13回プダン国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞受賞
  • 第34回ソウル インディペンデント映画祭観客賞受賞
  • 2009年サンダンス映画祭ワールド・ドキュメンタリー部門正式出品
  • 第45回韓国百想藝術大賞 新人監督賞受賞
 

不自由な足を引きずりながら、牛を引いて畑仕事をするチェおじいさん。となりの畑では、トラクターを使って耕していますが、おじいさんは牛で耕しています。おじいさんと同じように、牛も年取っています。踏ん張る牛の足が映し出されます。おじいさんは79歳。牛の寿命は15年と言われている中で、おじいさんの牛は30年もおじいさんと働いています。

牛が食べる草を育てるため、おじいさんは農薬を使いません。おじいさんに対するおばあさんのぐちが、聞こえます。

たくさんの草を背追ったおじいさんが杖を頼りにして立ち上がろうとしますが、立てません。おじいさんの歩みが、一歩一歩確かめながら歩く牛の歩みと重なります。

おじいさんは、牛だけに荷物を背負わせることなく、自分も背負います。牛と同じ歩みで、美しい自然の中を進みます。おじいさんも牛も自然の一部として暮らしています。

牛の鈴音
(C)2008 STUDIO NURIMBO

おじいさんは、最近たびたび頭が痛くなります。何も言わず、じっと頭をかかえるおじいさん。牛が引く荷車に乗って、おじいさんとおばあさんは病院に行きました。その帰り道、二人は遺影のために写真を撮りました。働くのをひかえるようにと言う医者のことばを無視して、おじいさんは働きます。「人間はいずれ死ぬものだ。死ぬのは人間の営みだ。あくせくするな」と言っているようです。

年老いた牛のかわりとして、おじいさんは仔牛を飼いました。しかし仔牛は言うことをきかず、おじいさんにぶつかってきました。手に負えないと考えたおじいさんは、仔牛を売りに市場へ行った。年取った牛は、二人が乗った荷車を引くことができません。おじいさんはおばあさんに荷車から降りるように怒鳴ります。おばあさんは「なんでこんな男に嫁いだのか。わたしの青春よ、どこへ行った!」と嘆きます。

牛の鈴音
(C)2008 STUDIO NURIMBO

足にけがをしたおじいさんは、牛の世話ができなくなり、ついに牛を売る決心をします。しかし、牛の目から落ちた涙を見たおじいさんは、結局手放すことができずに家に連れ帰りました。牛は、もう助かる見込みはありません。おじいさんは牛の花輪と鈴を外しました。

おばあさんは牛に言います。「あんたは、国で一番の牛だった。9人の子どもを育ててくれた。病気なのに、薪をたくさん運んでくれた。わたしたちが困らないために。」

 

おじいさんとおばあさんの暮らしを、たんたんと追っていくだけのドキュメンタリー作品です。ゆっくり、ゆっくりと時は流れていきます。牛も生きています。山も生きています。草も山の植物も生きています。おじいさんもおばあさんも生きています。文句ばかり言っていたおばあさんも、おじいさんを大切に思い、牛を大切に思っています。おばあさんとおじいさん、そして牛の姿から、「生きる」ことをじっくりと味わうようにと促す感慨深い映画です。


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