お薦めシネマ
きみがくれた未来
2010年12月
CHARLIE ST.CLOUD
- 監督:バー・スティアーズ
- 脚本:クレイウグ・ピアース、ルイス・コリック
- 原作:ベン・シャーウッド(角川文庫)
- 音楽:ロルフ・ケント
- 出演:ザック・エフロン、アマンダ・クルー、チャーリー・ターハン
- 配給:東宝東和
2010年 アメリカ映画 1時間39分
愛する人の死が少しでも自分に関係していると感じるとき、だれでも自責の念に駆られます。「あのとき、こうしていたら」、反対に「あのとき、ああしなかったら」。苦しい思いが渦巻き、暗闇の中から脱出することはできません。いえ、苦しみから逃れたら、亡くなった人に悪いと思ってしまいます。そのようなとき、人はどのようにして立ち直ることができるでしょうか? その人に対して「すまない」という思いから、どのように解放されるのでしょうか? 「きみがくれた未来」は、大切な弟を失った青年が、弟への罪の意識から次第に解放されて、つらい現実を乗り越えて、自分の未来に向かって方向を変えていく、生き直していく物語です。
物語
高校生のチャーリー(ザック・エフロン)は、11歳の弟サム(チャーリー・ターハン)と大の仲良し。チャーリーとサムの乗ったヨットは、ライバルのテス(アマンダ・クルー)を負かしてヨットレースで優勝した。チャーリーはヨットでスポーツ奨学金を得ることができ、スタンフォード大学への進学が用意されていた。母親を経済的に助けるためにも奨学金を得て大学に行きたいと思っていたが、弟のサムが寂しがることを思うと気が重くなっていた。
(C)2010 Universal Pictures. ALL RIGHTS RESERED.
卒業式の夜、母は仕事に出かけ、チャーリーは友達と会うため車で出かけようとしていたが、サムが一緒に行くと車に同乗した。まもなく、二人の乗った車は、二重三重の衝突事故に巻き込まれ、救急車で運ばれる。搬送先の病院でサムが亡くなった。チャーリーは、救命士の祈りで一命をとりとめる。なぜ自分だけ助かったのかと泣く彼に、救命士は「君が再びいのちを得たのは、何か理由があるはずだ」と力づけた。救命士は、チャーリーのために、絶望した人の保護者である聖タダイに祈ったのだった。
母が「サムをよろしくね」と言って出かけていったのに、弟を守ることができなかったことにチャーリーは自分を責めた。サムの棺を墓に納めるとき、サムが大切にしていたグローブを棺の中に入れるよう促されるが、チャーリーは手放すことができず、グローブを握って森の中に逃げ込んだ。野球の選手になりたいサムのため、二人は毎日、夕暮れの大砲の合図でキャッチボールをしていたのだった。
森の中で泣き崩れるチャーリーの前に、事故のときの服装のサムがやってきた。サムは、今までのように、この時刻にここで野球の練習をしようと約束を迫った。チャーリーは約束し、それから毎日、大砲の音を合図に忠実に森に向かった。この時間は、チャーリーの大切な時間となった。
5年後。サムとの時間を守るために大学進学をあきらめたチャーリーは、サムの墓のある墓地の管理人となっていた。そこへ、テスが墓参りにやってきた。彼女は単独で世界一周のヨットレースに参加するため、町に戻ってきたのだった。自分が果たせなかった夢を実現しているテスを見て、チャーリーの心は穏やかでなくなる。うらやましさと同時に、テスの存在を意識するようになっていた。
そんなチャーリーの心をサムは敏感に感じていた。「ぼくのことを忘れはじめている……」。弟を悲しませたくないという思いとテスへの思いに、チャーリーの心は揺れた。
(C)2010 Universal Pictures. ALL RIGHTS RESERED.
ある日、レース前のテスト走行に一人で出かけたテスのヨットが嵐に遭い、音信が途絶えたという知らせが入る。いのちが絶望視されはじめたが、チャーリーはテスがいそうな場所に心当たりがあった。テスを探しに海に出たチャーリーだが、サムとの約束の時間が迫っていた。
亡くなった人々は、いつまでも自分を思って自分のために悲しんで生きるよりも、「あなたの人生を生きなさい」と言っているはずです。サムの存在は、チャーリーの心の反映でした。気持ちの整理ができるまでには時間がかかります。しかし、その気持ちとじっくりつきあった後には、自分の未来に向けて希望を持って歩むことができる時が来るのです。愛する人の死と向き合うことの大切さを教えてくれる作品でした。