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 神々と男たち

2011年 3月

DES HOMMES ET DES DIEUX

神々と男たち

  • 監督:グザヴィエ・ボーヴォワ
  • 製作・脚本・脚色・せりふ:エチエンヌ・コマール
  • 出演:ランベール・ウィルソン、マイケル・ロンズデール、
    オリヴィエ・ラブルダン、フィリップ・ロダンバッシュ、
    ジャック・エルラン、ロイック・ピション、
    グザヴィエ・マリー、ジャン=マリー・フラン、
    オリヴィエ・ペリエ
  • 配給:マジックアワー、IMJエンタテインメント
  • ナショナル・ボード・オブ・レビュー最優秀外国語映画賞受賞
  • 第83回アカデミー賞外国語映画賞フランス代表
  • セザール賞10部門ノミネート
  • カンヌ国際映画祭グランプリ・エキュメニック賞・国家教育賞受賞
  • 他、受賞多数

2010年 フランス映画 2時間



昨年の東京国際映画祭WORLD CINEMA部門で上映された、実話に基づく作品です。それは1996年に起きた悲しい事件です。

アルジェリアのチビリヌにあるトラピスト修道会(厳律シトー会)が映画の舞台です。「祈りかつ働け」のモットーのもとに生活しているトラピスト修道会は、日本にも北海道と大分にあります。クッキーやバターなどが有名ですのでご存じの方もいらっしゃると思います。

当時アルジェリアは内戦のさ中にありました。フランス人の司祭や修道者7人が、武装イスラム集団に誘拐され、2か月後に遺体で発見されました。村人たちに慕われていた彼らは、身の危険を感じはじめたとき、国に帰るかここに残るかの苦渋の決断を迫られます。それは神から問われる決断でした。

物語

アルジェリアの山あいの村に、トラピスト修道院がありました。祈りではじまり、祈りで閉じられる一日。彼らの歌う聖歌が、静かな彼らの生活をまとめています。若い院長・クリスチャン(ランベール・ウィルソン)のもとで、静かな祈りの生活をしていました。

日が昇ると、人々が修道院に集まってきます。修道院には診療所が開かれており、医師である修道士リュック(マイケル・ロンズデール)の診察を待つ村人の列は、毎日修道院の壁づたいに伸びていました。修道院は、みなの相談に乗ったりして村の中で頼りとなる存在でした。村人たちは、修道院によって守られていると感じでいました。

神々と男たち
  (C) 2010 ARMADA FILMS - WHY NOT PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINEMA

修道士たちは、信仰を別にするイスラム教徒ともよい関係を持っていました。しかしある日、クロアチア人の労働者が殺されるという事件が起きました。軍がやってきて、修道院を守るために警備をしましょうと提案しますが、若い院長はそれを断りました。彼らは、だれとでも兄弟として関わっていましたし、今までと同じように、村人との関係性の中で過ごしていきたいと思っていたからです。母国フランスへ戻るかこの村に残るか、院長は一人ひとりに問いかけます。帰国すると答えた人と、残ることを希望する人の数は半々でした。もう少し考えようとクリスチャンは提案します。

とうとう、恐れていたことが起きました。クリスマス・イブの夜、過激派グループが修道院に押し入ってきたのです。過激派グループは負傷した仲間の手当のために、リュックを連れていきたいと迫りました。しかしクリスチャンはこれをきっぱりと断ります。クリスチャンの言葉を受けて、彼らはおとなしく帰っていきました。しかし、またいつかやってくるのでは……と恐れの日が続きます。

神々と男たち
  (C) 2010 ARMADA FILMS - WHY NOT PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINEMA

彼らは問い続けます。
「生きていてこそ、修道士の働きができるのだ」
「村人たちが危険な目にあっているのに、自分たちだけ去ることはできない」
「死ぬためにここに来たのではない」
「村人を見捨てることはできない。暴力に負けてはいけない」
悩みの日々が続きます。

神々と男たち
  (C) 2010 ARMADA FILMS - WHY NOT PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINEMA
 

そして再び意見を問う日が来ました。みなが残ることを選びました。気持ちが決まって心が一つになったのもつかの間、夜、彼らが眠っているとき、怒濤のように過激派グループが修道院の門を襲いました。

 

パキスタン、イラク、アフガニスタンなど、いまだに信仰・思想の故に殺害される事件が後をたちません。15年前、7人の修道士たちが命の危険を恐れず、その地にとどまることを選んだのは、何のためだったのでしょうか? 彼らに、勇気ある決断をさせたものは何なのでしょう。「よい羊飼いは、羊を見捨てない」というイエスの言葉どおり、彼らの命をかけた決断は、自分の弱さとの直面させられ、また信仰を問われるものでした。厳しい決断への歩みをとおして、彼らがますますひとつの思いになっていく過程がよく表現されていて、同じ聖別奉献生活をする者として考えさせられました。

修道士たちの姿は、まるでドキュメンタリー作品かと思われるほど自然で、最初から最後まで祈りの雰囲気が流れていました。彼らの生き方が輝く、心に残る作品です。身の危険を感じる中で、遺書のように書かれたクリスチャンの手紙は、今も読む人を感動させます。


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