Laudate | 女子パウロ会公式サイト

近年では、テレビドラマの「白い巨塔」のテーマ曲としてケリーが歌う「アメイジング・グレイス」が大ブレイクしました。信仰の歌・賛美歌として教会で歌われるだけでなく、その美しいメロディーと人間性深い内容の歌詞から、魂の歌として世界中の人々に愛し歌われいます。

Amazing grace! how sweet the sound
That sav'd a wretch like me!
I once was lost, but now am found,
Was blind, but now I see.

驚くべき恵み！　なんと甘い響き
わたしのような罪深い者が、神に救われた
かつてわたしは見失われていたが、今、見いだされており
見えなかったが、今、見える

作詞のジョン・ニュートンは、植民地時代の英国奴隷船の船長として、人身売買の奴隷貿易に荷担していましたが、嵐の中での必死の祈りから、神の恵みを体験します。奴隷たちに対する態度がひどいものであることに気づき回心します。「アメイジング・グレイス」は、同じ人間でありながら、彼らを人間として扱っていなかった罪深いわたしだが、そんなわたしを神は見捨てることなく恵みで満たしてくださったという感謝の歌です。

物語

船長をやめ、牧師となったジョン・ニュートン（アルバート・フィニー）は、粗末な衣服を着、奴隷として死んだ人々に赦しを求めて生きていました。そんな彼を、一人の若い政治家が訪れます。ジョンは、奴隷貿易廃止の動きをその若い政治家に託します。彼の名はウィリアム・ウィルバーフォース（ヨアン・グリフィズ）。裕福な家に生まれ、弁が立つ政治家として名を馳せていました。優しい心の持ち主だったウィルバフォースは、父から受け継いだ財を人々のために使い、同じ人間としてあってはならない扱いをした奴隷制度を廃止するために働こうと思っていました

「わたしが神をみつけたのではなく、神がわたしをみつけてくださった」「神をたたえるべきか、世を変えるべきか。神の道か、政治家の道か………」。悩むウィルバーフォースを支持するのは、親しい友である議員仲間のウィリアム･ピット（ベネディクト・ガンバーバッチ）でした。やがて首相となったビットは、友として首相として、彼を守り支えます。

奴隷制度を変えるためには、コンパッション＝情熱と、ともに戦う仲間が必要でした。ビットをはじめ、かつて奴隷にされた貴族出身のオラウタ・エクィアノ（ユッスー・ンドゥール）、情報を集めてくる活動家のトマス・クラークソン（ルーファス・シーウェル）、下院議員のヘンリーソントンなど、12人が集まりました。民衆の力で勝ち抜こうと36万人の署名を集め、ウィルバーフォースは議会に奴隷貿易廃止案を提案しました。しかし、議員たちの財源となっている奴隷貿易を廃止することは、容易なことではありません。ウィルバーフォースと奴隷貿易賛成派との間で激しい議論を戦わせますが、奴隷貿易賛成派の画策に負け、廃止案は否決されてしまいます。さらに奴隷制度賛成派は、ウィルバーフォースを国家の反逆者とし、彼の力を消滅させようと画策します。

落胆したウィルバーフォースは、抱えていた病が悪化し床につきました。アヘンを用いた痛み止めを常用しており、それが彼の体力を奪っていたのでした。療養中に出会い結婚したバーバラ・スプーナー（ロモーラ・ガライ）の励ましを得、再び立ち上がります。バーバラは「あなたには情熱がある、それが世界を動かす」と彼を力づけます。

今度は失敗できません。以前反対意見だった有力議員フォックス卿（マイケル・ガンボン）が仲間になったことに力を得たウィルバーフォースは、議員たちに悲惨な奴隷船を見てもらう計画をし、「神は人間を平等に造った」と訴えます。イギリス議会は再び、奴隷貿易廃止案について討議を始めます。

奴隷制度廃止のために生涯をかけた人物がいたことを、初めて知りました。奴隷船の中で、連れてこられた人々は悲惨な状態で、人間として扱われていませんでした。植民地に大農場を持っていた議員は奴隷貿易でも富を得、大英帝国も奴隷制度の上に成り立っていたのです。自分のしてきたことの罪を悔いた船長の話は、ウィルバーフォースを動かします。1700年代に書かれた「アメイジング・グレイス」の詩は、神への深い信仰の歌として、今も救いを待ち望む人に希望を与え続けています。