お薦めシネマ
あぜ道のダンディ
2011年 6月
- 監督・脚本:石井裕也
- 音楽:今村左悶、野村知秋
- 出演:光石研、田口トモロヲ、森岡龍、吉永淳、西田尚美
- 配給:ビターズエンド
2011年 日本映画 110分
「カッコイイ男になりたい」と願い続けているお父さんと、そんなお父さんをやさしく見つめる子どもたちの、心温まるお話です。
物語
胃の調子が悪い。吐き気もする。亡くなった女房(西田尚美)と同じ症状だ。「きっと、胃ガンだ! あと数ヶ月の命……」。配送業の宮田(光石研)はうなだれる。一浪した長男・俊也(森岡龍)と、高校3年の娘・桃子(吉永淳)は、ともに大学に合格した。二人とも私立大学で、東京で暮らすと言う。働いても働いても、出ていくお金が多くて追いつかない。くたくたに疲れて家に帰っても、子どもたちはそれぞれの部屋に入ってしまい、「お帰り」とも言ってくれない。子どもたちと話したいが、ちっとも口をきいてくれない。冷蔵庫から缶ビールを出し、一人座敷に入って仏壇に飾られた女房の遺影を見ながら、グッと飲む。「ああ……」上着を脱ぎ、作業服のままごろんと横になって一日は終わる。
(C) 2011「あぜ道のダンディ」製作委員会
翌日、また自転車をこぎ、会社に向かってあぜ道を走る。自分を力づけて自転車を走らせ会社に到着。朝食も取らずに、仕事を始める。
こんな生活がいつまで続くのか。どうしたらいいのか。夜、居酒屋で、おなさなじみの澤田(田口トモロヲ)に愚痴をこぼす日々。澤田とは、中学のとき「カッコイイ男になろうぜ」と約束しあった仲だった。いつも時間を作って一緒に過ごしてくれる澤田に感謝しながらも、働かなくても遺産で生活できることをうらやましく思い、また子どものいない澤田に対し、「お前にはわからない!」とどなってしまう。「おい澤田、おれたち、カッコイイ男になっているだろうか?」とぼやく。
(C) 2011「あぜ道のダンディ」製作委員会
覚悟して検査の結果を聞きに病院へ行ったが、胃炎だと言う。単なるストレスらしい。「澤田、胃ガンになることもできなかった」「どうせおれなんか死んでも、だれも悲しんでくれないんだ」と、また居酒屋に澤田を呼び出し、酔いつぶれる。
(C) 2011「あぜ道のダンディ」製作委員会
子どもたちは、大学に合格はしたものの、実のところ、東京に行かなくてはいけない理由はなかった。安月給のお父さんが、自分たちのために、毎日がんばって働いていることも知っている。体は大丈夫なのだろうか。「お金のことは心配するな。お父さん、お金もちなんだから」と言っているが、実際はそれほどお金はないことも知っている。お母さんが死んでから、男手ひとつで苦労して育ててくれていることに、感謝している。しかし、お父さんとうまく会話ができない。
ある日、お父さんは勇気を出して、子どもたちと接する行動に出た。
この子たち、好き勝手にしていて、いったいどうなっているの?? とちょっと腹を立ててみていたのですが、しっかりと親の姿を見てることがわかり、安心しました。心温まる親子のお話です。「がんばれ、お父さん!」と応援したくなります。等身大のドラマに、心が温かくなりました。全国のお父さん、お母さん、そして中高生から大学生ぐらいまでの子どもたちに、ぜひ見てほしい作品です。