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お薦めシネマ
黄色い星の子供たち
2011年 7月
LA RAFLE
- 監督・脚本:ローズ・ボッシュ
- 出演:メラニー・ロラン、ジャン・レノ
- 配給:アルバトロス・フィルム
2010年 フランス・ドイツ・ハンガリー映画 125分
- 文部科学省特別選定作品(少年・青年・成人・家庭向き)
ナチス・ドイツの虐殺行為は、すでにその多くが知られていますが、パリで行われたナチスの行いにフランス警察が関わっていたことが、50年を経て明らかになりました。1995年、シラク大統領は、ナチス占領下の1942年に行われたユダヤ人の一斉検挙(ユダヤ人狩り)に、フランス警察が関わっていたことを認めました。
この事実を知ったローズ・ボッシュ監督は、記録文書や映像だけでなく、生存者たちから証言を集め、できるだけ事実を忠実に映画に再現しようと思いました。「未来の幸せをかなえようとするとき、必要なものは過去の過ちを知ること」「非業の死を遂げた人々と子供たちに、もう一度生命を与えたい」という祈りにもにた思いから、一人ひとりのエピソードをつなぎ、彼らの人生を再現して、生きた証しをフィルムに焼き付けました。
物語
ナチス占領下にあったパリ。ユダヤ人たちは、外国籍の人々が暮らす地域に住み、胸に大きな黄色い星を付けるよう義務づけられていた。生活は制限され、公園や映画館、遊園地などへの立ち入りを禁止されていた。生活は貧しかったが、彼らは助け合い誇り高く生きていた。
しかし、恐れいていたその日はやってきた。1942年7月16日、まだ、人々が眠っている朝4時。フランス警察がやってきて、けたたましくドアを叩いた。ユダヤ人迫害政策をすすめていたナチス・ドイツは、ユダヤ人を引き渡すようフランスに求め、フランス警察は、ユダヤ人難民を撤廃するのに都合がよいと考えた元帥のもと、警察の権威を認めることを条件に、自分たちの手でユダヤ人を検挙しはじめたのだ。
警官の怒鳴り声と、母親や子供たちの泣き叫ぶ声の中、ある者は隠れ、ある者は子供を逃がし、ある母親は赤ん坊を抱いて窓から飛び降りた。子供たちをかくまうフランス人もいた。彼らはバスに乗せられ、ヴェル・デイヴ(冬季競技場)へと送られた。その朝、13,000人のユダヤ人が検挙された。
赤十字の看護師のアネット(メラニー・ロラン)は、ヴェル・デイヴに派遣された。体育館に一歩足を踏み込み、立ちつくした。蒸し暑く空気の悪い体育館いっぱいに人々が押し込まれていた。看護師と分かると、人々が手をさしのべてきた。しかし、一人ひとりの訴えに応えることはできなかった。これだけの人数に対して、たった一人の医師と6人の看護師しかいなかった。医師のシェインパウム(ジャン・レノ)も、検挙されたユダヤ人だった。一度だけ人間的な行為が行われた。それは、ホースの点検にやってきた消防士が機転をきかせ、人々に向かって消火用の水を振る舞ったのだ。そんな中、若い女性が変装して競技場から脱出した。
またある日突然、彼らは体育館から収容所へと移送された。子供たちのことが心配なアネットは、ユダヤ人と同じ食事をとり続けた。3週間で8キロやせた姿で知事を訪ね、彼女の訴えで食料の配給を受けることができた。しかし、ユダヤ人たちが家族で過ごせたのはここまでだった。さらに別の収容所への移送が決まった。そこへ行くのはユダヤ人だけで、アネットは行くことができない。それは、大人たちだけの移送だった。大人たちには分かっていた。残された子供たちとは、もう2度と会えないということが。母と子供たちの必死の叫び声を前にして、アネットは何もすることができなかった。
こ事実を伝えたいというローザ監督に力を与えたのは、一斉検挙された子供たちの中で生き残った一人の男性でした。彼は、11歳のときに検挙され収容所から脱出したのです。彼の話から、映画に登場する少年ジョーが生まれました。彼は大人たちと分かれるとき、母親の「約束して、生きるのよ」の声を心に刻み、幼い弟を連れ脱出を考えたのです。
このような事実があったことをしっかりと受け止めることで、虐殺されたたくさんの人々がいたこと、彼らはわたしたちと同じように、家族の愛の中で暮らしていたことを記憶にとどめることが必要だと思います。それが、彼らへの鎮魂になれば……。そして、ふたたびこのような起きないように……。