お薦めシネマ
うさぎドロップ
2011年 8月
- 監督:SABU
- 脚本:SABU、林民夫
- 原作:宇仁田ゆみ『うさぎドロップ』
(フィール・ヤング/祥伝社) - 出演:松山ケンイチ、香里奈、芦田愛菜、池脇千鶴、
風吹じゅん、中村梅雀 - 音楽:森敬
- 配給:ショウゲート
2011年 日本映画 114分
2002年にデビューしてから、まだ10年たっていないのに、今や映画で大活躍の松山ケンイチさんです。青春物から、狂気ただよう怖い役まで、多彩な才能を持った方です、日本アカデミー賞新人俳優賞、優秀主演男優賞、優秀助演男優賞などを受賞している力のある俳優さんですが、「うさぎドロップ」では、今売れっ子の名子役・芦田愛菜ちゃんを相手に、今までとはまた違った姿を見せています。
物語
祖父の葬式に駆けつけた大吉(松山ケンイチ)は、すでに集まっている親戚、近所の人たちから、けげんな目で見つめられる。なぜか、自分をさけているようだ。それもそのはず、大吉は亡くなった祖父とそっくりで、みなは祖父が生き返ったのかと思ったらしい。
葬儀に集まった人びとをよそに、庭にひとりでたたずむ小さな女の子がいた。いったいだれなのか? 「おじいちゃんの隠し子!」だという。その子は「りん」(芦田愛菜)という名で6歳。母親はいず、りんの父親である祖父と2人で暮らしていた。
育てていた祖父が亡くなった今、りんをどうするかが問題です。親戚の人びとは引き取ろうとせず、世話を押しつけ合っている。そんなやりとりに怒りを感じた大吉は、庭のすみにしゃがんでいるりんに声をかける。「俺の家に来るか?」 見上げたりんは、大吉の背広の裾をしっかりと握りしめた。
大吉の両親(中村梅雀、風吹じゅん)はあわてる。「子どもを一人を育てるのが、どれだけ大変だか分かってるの!」。周囲が止めるのもきかず、大吉はりんを連れてひとり暮らしの家へ帰る。りんは大吉を「ダイキチ」と呼ぶ。
ダイキチは翌朝から、小さな子どもと暮らすことが容易でないことを思い知らされる。「カッコつけちゃったよ!」と後悔するが後戻りはできない。洋服や靴を買いに行き、保育園の手続きをしなければならない。24時間体制で預かってくれる緊急一時保育園を探し出すが、会社から遠く、保育園に預けて会社に行き、退社後、走って保育園に向かう毎日で、ダイキチは疲れ切ってしまった。
ダイキチは一大決心をする。バリバリと仕事をこなしていたダイキチは周囲の信頼もあつかったが、残業のない職場への異動を希望したのだ。倉庫へと移ったダイキチは、ここでも仲間たちから受け入れられ、また、シングルマザーで、やはり子どものために異動・降格を希望して倉庫で働いている後藤(池脇千鶴)に相談し励まされて力を得ていた。
新しい保育園を見つけ、りんにはコウキという男の子の友達もできた。コウキの母親でシングルマザーのゆかり(香里奈)も、何かと子育てについて教え助けてくれる。りんが熱を出していることもゆかりが見つけ病院を紹介してくれた。ダイキチがりんとの絆を深めていく、そんなとき、伯父から紹介されたという児童相談所の女性相談員がやってきて、りんを施設に入れるよう勧める。
世間体を気にする日本人ですが、この映画を見て、人間は自分の思いに素直になれば、助け合って生きていくことができる、親になることはステキだ、というメッセージを感じました。周囲の人びとは、りんを育てるダイキチの一所懸命な姿を見て、協力しようという思いに変わっていきます。松山ケンイチさんの愛菜ちゃんを見るまなざしがとてもやさしく、頼りがいがあるとてもいい顔をしています。映画を見た後、さわやかな気持ちになりました。
この人が、2012年は、NHK大河ドラマ「平将門」の主役を演じます。平家の頭領として、どのような大きな器を見てくれるのか、また楽しみです。