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 神様のカルテ

2011年 9月

神様のカルテ

  • 監督: 深川栄洋
  • 原作: 夏川草介 小学館文庫『神様のカルテ』
  • 脚本: 後藤法子
  • 音楽: 松谷卓
  • テーマ曲:辻井伸行
  • 出演:櫻井翔、宮崎あおい、要潤、吉瀬美智子、
        岡田義徳、朝倉あき、原田泰造、西岡徳馬、
        池脇千鶴、加賀まりこ、柄本明
  • 配給:東宝

2011年 日本映画 2時間8分


映画「神様のカルテ」の原作の作者・夏川草介さんは、長野県松本市の病院で働く現役の医師です。ご自分の体験をもとにして初めて書いた小説『神様のカルテ』が、第10回小学館文庫小説賞を受賞し、作家デビューをしました。この作品は、全国の書店店員が選ぶ「2010年本屋大賞」で2位にもなっています。

医療技術や新しい治療が発見され進んでいく中で、その医療から外されてしまった人に、医療関係者はどう向き合うのか? 治療が単に身体だけのことでなく心の問題でもあることを、静かに示しています。「60歳のラブレター」「洋菓子店コアンドル」などに続く、深川監督の優しさあふれる作品です。


物語

長野県松本市にある本庄病院は、24時間365日対応の救急医療を掲げている。内科医の栗原一止(櫻井翔)が当直の夜はなぜか患者が多く、彼は「引く医者」と呼ばれていた。今晩も、待合室には患者があふれていた。救急車もやってきて、患者からは「いつになったら診察してもらえるのか」と苦情が寄せられていた。2人の医師では、とうていさばききれない。優秀な救急外来看護師・外村(吉瀬美智子)は、「おれは、内科医だ!」と嘆きながら患者を診ている、ちょっとスローな栗原のお尻を叩いて診療を進めている。

魔の夜が終わり、朝がやってきた。もう一人の若い当直勤務の医師は、床に倒れ込んで爆睡している。尊敬する上司の貫田(柄本明)や先輩の外科医・砂山(要潤)らが出勤してきた。当直医師が交代で家に帰れるわけではない。彼らにとって、35時間勤務の朝が始まったにすぎないのだ。栗原は外来で診療し、また病棟の患者を診て、夕方家に帰った。

栗原と妻・榛名(宮崎あおい)は、坂道を上った御嶽荘に住んでいた。二人は、廃屋となった旅館を改造した家で、学士と呼ばれている大学生(岡田義徳)、大家である画家の男爵(原田泰造)とともに、共同自炊で暮らしていた。部屋に入った栗原は、榛名の置き手紙を見つける。ハルは写真家で、撮影に出かけると書いてあった。

神様のカルテ
(C)2011 「神様のカルテ」製作委員会


口数の少ない栗原に対し、新人看護師の水無(朝倉あき)が文句を言った。痛みがひどく苦しんでいる患者の痛みを取ってやってくれと言うのだ。一人の患者にのめり込んではいけないと、主任看護師の東西(池脇千鶴)が諭す。モルヒネの量を増やすことは、死を意味していた。栗原は、その適量を探っていたのだ。3日間の苦痛のない日を過ごして、患者は亡くなった。栗原は病院に泊まって、その患者の最期に寄り添った。しかし、親族が到着するまでという家族の強い希望で、30分間心臓マッサージをすることになった。その結果、肋骨がすべて折れた。「自分はいったい何をしているのか……」と、栗原は悩む。

ある日、栗原は貫田の計らいで、大学病院の研修に参加した。大学病院は、栗原が目を見張るような理想的な緊急医療設備と体制が整っていた。栗原の的確な判断と治療技術を見た大学病院の高山教授は、栗原を気に入り、大学病院に来て技を磨くよう勧めた。

砂原は、「君は選ばれた人間なのだ。研修に行くということがどんな道を開いているのか、わからないのか!」と、高山医師の研修に参加することを勧める。しかし、栗原は迷っていた。きつい夜勤、診察しても診察してもやってくる患者たち。「この手から、いのちがこぼれていく」と情けなくなる。しかし、大学病院での研究の道を選びきれない自分がいた。

ある日、診療する栗原の前に、一人の女性が座った。夫を亡くした63歳の安曇(加賀まりこ)という女性は、胆のうガンで手術ができず、後半年のいのちと告げられ、大学病院で見放された。安曇は、大学病院での研修中に、栗原に診療してもらい、そのときに栗原がびっしりと書いたカルテを見て、栗原に最後の望みをかけて本庄病院に来たのだった。

神様のカルテ
(C)2011 「神様のカルテ」製作委員会


 


日本テレビの夜の報道番組「ZERO」でキャスターを務めている櫻井翔さん、そのままの栗原先生です。彼の誠実さがよく生かされています。彼とは対照的に、テキパキと物を言う看護師たちとのかけあいが愉快です。

辻井伸行さん作曲のピアノ演奏は、誠実に一生懸命考え悩みながら生きている栗原と、彼をさりげなく、しかししっかりと支えている妻・榛名の純粋さを表現していて、希望と清涼感がありステキです。

栗原先生の、病院での患者さんとの接し方をとおして、また、下宿の御獄荘に暮らす人々の触れ合いをとおして、ともすると忙しさの中で振り落として生きてしまう人間の優しさ、何も言わなくてもじっと見守っていてくれる存在のありがたさが伝わってきます。


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