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 カリーナの林檎 ~チェルノブイリの森~

2011年11月

 

カリーナの林檎

  • 監督・脚本:今関あきよし
  • 脚本:いしかわ彰
  • 音楽:遠藤浩二
  • 日本語ナレーション:大林宣彦
  • 出演:ナスチャ・セリョギナ、ナスチャ・セリョギナ、
        オルガ・ヴォッツ、リュディミラ・シドルケヴィッチ
  • 配給協力:パル企画

2011年 日本映画 109分


1986年のチェルノブイリ原発事故から25年、今年、日本でも福島原発の恐ろしい事故が起きました。今関あきよし監督は、チェルノブイリの現地取材をもとにして、2004年に「少女カリーナに捧ぐ」という映画を完成させました。しかし、当時は人々の関心が低く公開にまでいたりませんでした。

チェルノブイリ原発事故に苦しむ人々と、福島第一原発事故で生活を脅かされている人々の姿が重なって見えた監督は、今年この映画を再編成し、今回の公開となりました。


物語

チェルノブイリ原発のある隣の国、ベラルーシに住むカリーナ(ナスチャ・セリョギナ)は、おばあちゃん(ナスチャ・セリョギナ)の家で夏休みを楽しく過ごしていた。夏休みも終わりに近づき、帰らなくてはいけない日がやってきた。おばあちゃんはやさしくて、いろいろなことを教えてくれる。空はきれいだし、川で遊んだり、畑仕事をしたりして楽しい。カリーナはおばあちゃんが大好き。「ずっとここにいたい!」でも、帰らなくてはいけない。

カリーナの林檎
(C)カリーナプロジェクト2011


カリーナのお母さん(オルガ・ヴォッツ)は、発病して入院している。お父さんは、お母さんの入院費を稼ぐために、遠くに働きに行っている。カリーナは、都会ミンスクにあるおばさん(リュディミラ・シドルケヴィッチ)の家に預けられていた。何かと口うるさいおばさんは、嫌いだ。おばあちゃんがおみやげにくれたおいしい林檎を、おばさんは迷惑そうにして、すぐゴミ箱に捨ててしまった。どうして?

カリーナは、入院しているお母さんのベッドで聞いてみた。「なぜ、おばあちゃんと一緒に暮らしてはいけないの?」

お母さんは、やさしく抱きしめて言った。「それは、悪い魔法使いのお城のせい。チェルノブイリに悪い魔法使いのお城があって、魔法使いがベラルーシに毒をまき散らしているの。それは見えないし、においもないし、それでみんなが病気になって・・・」そして、お母さんは言った。「どんなに辛いことがあっても、ぜったいに泣いてはいけない」と。

しかし、カリーナにはどうしておばあちゃんの家が危ないのかわからない。ある日、おばあちゃんが寝込んだと聞いたカリーナは、一人でバスに乗りおばあちゃんの家を訪ねた。おばあちゃんはベッドに寝ていた。「おばあちゃん、悪魔の城があるって、ほんと?」おばあちゃんは答えた。「悪魔なんて、神様がやっつけてくれるさ」

よくなったおばあちゃんは、カリーナを連れて教会へ行った。そこには、熱心に祈る村の人々がいた。

カリーナは、迎えに来たおじさんの車で、再びミンスクへと帰った。バレリーナを夢見ていた年上の友達が、急に具合が悪くなり亡くなった。お母さんの具合も悪くなった。なぜ神様は、悪魔をやっつけてくれないの?

やがてカリーナも病気になり入院する。しかし、悪魔に毒をまくのを止めてもらおうと思ったカリーナは、悪魔の城のあるチェルノブイリを目指して病院を抜け出した。

カリーナの林檎
(C)カリーナプロジェクト2011



 

天使のような、妖精のようなカリーナ。思いを素直に語り、行動にうつすカリーナ役のナスチャ・セリョギナはとても可憐です。

チェルノブイリ原発の周囲を吹く風の、不気味な音。それは、そのまま福島原発と津波に襲われた周囲の風景と重なります。たくさんの小さな命が、その被害をまともに受け苦しんでいます。挿入歌として流れる「アヴェ・マリア」は、悲しく訴えているようで、心からの祈りとなっていて印象に残ります。

「カリーナの林檎」の公式サイトには、プレ予告として、2011年4月1日に福島第一原発に向かったときの様子、対談、チェルノブイリを取材したときの映像が流れています。福島原発への道中、放射能測定器が、ジージー音を出しているのが不気味です。公式サイトを、ぜひご覧ください。


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