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 聴こえてる、ふりをしただけ

2012年 8月

聴こえてる、ふりをしただけ

  • 監督・脚本・編集:今泉かおり
  • 音楽:前村晴奈
  • 出演:野中はな、杉本隆幸、郷田芽瑠
  • 配給:アップリンク

2012年 日本映画 95分

  • 第62回ベルリン国際映画祭「ジェネレーションKプラス」部門で「子ども審査員特別賞」

今泉監督は、現役の看護師として働く2児の母親です。この作品は、監督が11歳のときの、家族や学校の友達について感じたことを思い出しながら作られました。そのときの自分にウソがないように心がけながら作られました。

小学5年の主人公が、自分を保護してくれていた大きな存在である母親を失ったことを、どう受け入れ乗り越えていくのかを、静かに描いていきます。


物語

サチ(野中はな)は11歳。ある日、突然の事故で母親を失いました。葬儀も終わり、父親(杉本隆幸)も会社に行き、サチも学校へ登校し、日常生活に戻ろうとしていました。しかし、サチも父親も、心は宙を舞っているようです。母親の死を、まだ受け止められないでいます。

「お母さんは、サチのことを見守ってくれているのかな」

父親は、仏壇の前に置いた母親の指輪を赤いひもにくぐらせ、サチが外出するときは首から掛けるようにと命じます。家を出るときは、必ず仏壇の前で祈り、赤いひもを首に掛け、学校から帰ると、赤いひもを仏壇の前に置きます。

サチは学校へ行っても、まだ授業に身が入りません。友達も声をかけてくれますが、以前のようにはつきあえません。

聴こえてる、ふりをしただけ


ある日、サチのクラスに転校生がやってきました。ちょっと変わった女の子・希(郷田芽瑠)は、話し方が幼稚で、お化けを怖がり、一人でトイレに行くことができません。みんなにバカにされる希に、サチは優しく近づきます。希は「サッちゃん、サッちゃん」と、サチを信頼するようになります。

聴こえてる、ふりをしただけ


サチには指輪を通してお母さんが付いているので、学校でもどうにか一日を過ごすことができます。しかし、甘えん坊の希の面倒を見ながら、サチの心に変化が生じてきます。

そんな中、父親が会社に行けないようになり、ジャージを着て一日仏壇の前に座ったままの日が続きます。サチにも荒くあたるようになります。

 

言葉少なく、また音楽もほとんどありません。サチの表情のない顔と姿勢が印象的です。母親を失い、父親も心配な状態になり……。しかし、サチはこの大きな試練を通して、友達より先に、一歩大人になっていきます。じっくりと味わいたい作品です。


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