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お薦めシネマ
さなぎ -学校に行きたくない-
2012年12月
- 監督・撮影・編集:三浦淳子
- 出演:木下愛、木下洋子、木下節子
- 配給:クロスフィット、トリステロ・フィルムズ
2012年 日本映画 1時間43分
朝8時過ぎ、食卓で朝食をしている女の子は、学校に行く時間になったことをお母さんから告げられる。しかし、いっこうにあわてるそぶりがない。9時になっても、なかなか反応しない。お母さんは、そっと待つ。そのうち言い出した。小さな声で「行きたくない・・・」「おなか、イタイ!」お母さんは、愛ちゃんのそんな態度につきあいながら、どうにか車に愛ちゃんを乗せ、学校に向かう。
愛ちゃんは、小学校一年の2学期のとき、「頭が痛い」と言い出し、学校に行くことを拒否し始めた。お母さんはあわて、いろいろな本を読み、専門家に相談もした。
1998年の夏、監督の三浦淳子さんは、友人の姪である木下愛ちゃんが不登校であることを知り、彼女の家を訪れカメラを回し始める。長野県下伊那郡喬木村。豊かな自然に囲まれた、三世代同居の家庭の中で、愛ちゃんは家族に愛されて育った。三浦監督は、その家族の中で、14年間の愛ちゃんの成長を追い続けた。
お母さんは「やらなくてもいいよ」という言葉がなかなか言えなかったと言う。気楽に、気楽にと、自分に言い聞かせ、距離を置きながら、しかし、愛ちゃんを見守り育てる。
愛ちゃんには、いつも外で一緒に遊ぶ友だちがいた。美保ちゃん、結美ちゃん、和美ちゃんだ。畑や野原で草花を摘み、川で一緒に水遊びする。小学3年、4年、5年、愛ちゃんは、ゆっくりと育っていく。
6年。愛ちゃんの顔つきが変わった。甘えん坊の顔から、キリリとした顔になっていた。驚いたことに、児童会長になったのだ。なんと「未成年の主張」をするということを公約にし、当選したという。
そして、大学生になった愛ちゃん。ステキな女性になっていた。東京で一人暮らしをし、美術大学でデザインを学んでいる。デザイン制作のために、蝉の抜け殻を集めている。
2011年、大学4年生になった愛ちゃんに、三浦監督はマイクを向ける。「どうして昔、学校に行なかったのか?」 愛ちゃんは、不登校になった小学校一年生のときのことを答えていく。
愛ちゃんは、はじめて教室に入ったときの様子を覚えていて、そのときの心の動きをよく分かっていました。淡淡と答えている愛ちゃんを見ながら、子どもの心はすごいなと思いました。不登校になると、親は心配して、いろいろと関わるようになりますが、子どもの方は、しっかりと分かっているのです。ただ、それを表現するのが、小さかったり、時間がかかったりするのですが、それを大人は待っていられないようです。
「あなたの時間で、ゆっくりと育っていいんだよ」という信号を周囲が送ることができたら、子どもは、自分が持っている力で、豊かに育っていくのかもしれません。
14年間という長い年月の撮影が、貴重な財産になりました。子どもの心、子どもの成長を表現するすばらしいメッセージを送っている作品だと思いました。
「さなぎ」は、死んでいるみたいだが、ゲル状の体が蝶になるために準備している。そんな「さなぎ」の時間が大切なのだ、という言葉が心に残ります。
(C) 2012『グッモーエビアン!』製作委員会
まわりを気にせず自分の思い通りに表現するヤグと、ヤグに対して何も言わないアキに、ハツキはイライラしている。そんなハツキの家族を、親友のトモ(能年玲奈)はステキだと言う。ハツキはトモに「何も分かっていない!」と言う。
ある日、トモがハツキに大事なことを告げようとするのだが、ハツキはアキとヤグのことで頭がいっぱいでトモの思いに気づかずにいた。トモが引っ越すことを知ったのは、彼女が出発した後だった。「思っていることは、きちんと伝えないと取り返しがつかないことになるよ」と、ヤグはハツキに伝える。
ヤグの度を超した明るさと図々しさが嫌いなハツキは、ある日、アキに対して怒りを爆発させてしまう。そのことがきっかけで、ハツキは、アキとヤグが一緒に暮らすようになったいきさつを知るようになる。
(C) 2012『グッモーエビアン!』製作委員会
(C) 2012『グッモーエビアン!』製作委員会
一方的な見方で物事を見、怒っていた少女が、視野を広げていきながら他者を受け入れ、家族を受け入れて成長していく姿を描いている、愛情たっぷりで、やさしいパンチの効いた作品です。
バカなことばかりして……と思われる行動の底に、親の深い愛が見えました。「いい高校へ行って、いい大学に入って、そういうのはつまらん!」と啖呵を切る麻生久美子さんの姿がカッコイイ! 何が幸せか、ヤグの姿を見て思わされます。