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 横道世之介

2013年 2月

横道世之介

  • 監督・脚本:沖田修一
  • 脚本:前田司郎
  • 原作:吉田修一
  • 音楽:高田漣
  • 出演:高良健吾、吉高由里子、池松壮亮、伊藤歩、綾野剛
  • 配給:ショウゲート

2012年 日本映画 2時間40分


横道世之介。ちょっと変な名前です。しかし、この名前、彼の生き方を示しているようにも思えます。普通ではなく、横道を歩くような変わった人ですが、いや、彼こそが人間としての王道を歩いていたと、かかわった人は、彼がいなくなってから思うのです。

世之介は、正直ものです。融通がきかない。相手が発した言葉を、そのままに受け取る。人には本音と建て前があり、心の中で思ったことがそのまま発言されるわけではない、という、だれもがしていることが、世之介には通用しない。それもそのはず、世之介は、自分の思っていることを口にし、行動に移すのです。人には図々しい人と思われてしまいます。こんな世之介は、最初はうっとうしく、みなはバカにするのですが、つきあっていくうちに世之介のことが気になります。

大学での初日、知る人がいない中で、最初の言葉をかけた人との付き合いがはじまります。社長令嬢の祥子(吉高由里子)、アルバイト生活の倉持(池松壮亮)、異性に興味がない加藤(綾野剛)、また、大学の外でであった世之介が憧れる年上の女性・千春(伊藤歩)。楽しい仲間との大学生活、またアルバイト先での生活が、世之介のまわりで展開していきます。

横道世之介
(C) 2013『横道世之介』製作委員会


一方で、大学を卒業してそれぞれの道を歩む生活が描かれます。学生時代の世之介たちと、数年後の彼らの生活とがパラレルに登場するので、学生時代に軸があって将来を予見しているのか、大人になってからの彼らに軸があって、何かをきっかけに学生時代の世之介のことを思い出しているのか、それはわかりません。2つの時を言ったり聞いたりしながら、人生とはこんなものだと見せているのかもしれません。

学生時代のことはすっかり忘れたころ、驚きのニュースがテレビに映し出されます。そして、世之介のことを知っている人々は思い出します。学生時代に、彼がキラキラと輝く存在だったことを。あの、おかしな世之介と出会ったことが宝物であることを。

横道世之介
(C) 2013『横道世之介』製作委員会


高良健吾さんだからこそ、どこかとぼけた世之介の味を出せたのかもしれません。2時間40分と映画としては長いのですが、まったく気になりません。楽しく、切なく、そして人生にピリッと影響を与える「世之介さん」。わたしもあなたに出会えてよかったよ、と言いたいです。

原作は、第23回柴田錬三郎賞を受賞した吉田修一氏の『横道世之介』です。見た後で、幸せ感が増してきて、ほほがゆるんでいることに気づくでしょう。


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