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 ガレキとラジオ

2013年 4月

 

ガレキとラジオ

  • 監督: 梅村太郎、塚原一成
  • 主題歌:MONKEY MAJIK
  • 音楽:内山肇
  • ナレーション:役所広司
  • 配給:アルゴ・ピクチャーズ

2012年 日本映画 1時間15分


宮城県南三陸町。町の60%の世帯が被害を受け、8,000人以上の人が避難生活を送ることになりました。東日本大震災から2か月後、今まで各家庭に情報を伝えていた無線の変わりに、町はFM放送を立ち上げました。

災害ラジオ「FMみなさん」は、10か月という期限付きの放送局です。避難所になっている体育館の廊下の隅っこが放送局のスペースです。スタッフは、自給840円で町が公募した人々です。サラリーマンの工藤さん、シングルファーザーで息子を育てているダンプ運転手の和泉さんなど、年齢もさまざまな男女9人。劇団に所属していたという女性の他は、放送についてはまったくの素人でした。

技術でも、アナウンスでも、はじめてのことばかりで最初は大変でした。しかし、ラジオを聴いている町の人々からの声が届くようになると、失敗で落ち込んでいるスタッフは元気をもらいました。行方不明の娘を探すため、毎日、流された家の跡地に向かう母親は、ラジオの声に力づけられました。町の人々に涙し、ともに笑うスタッフたちでした。

「今日はどこどこで、支援物資の配布があります」「今日のお風呂はどこどこです」「今日のお天気は・・・」、たどたどしい語りがラジオから流れました。やがてスタッフたちは、マイクを持って取材するようになりました。

ガレキとラジオ
(C)映画『ガレキとラジオ』製作委員会


仮設住宅に入った一人暮らしの方が、津波を思い出し、一人では生きていけないと自殺したというニュースが入りました。せっかく助かった命なのに、自分で死ぬなんて・・・。スタッフたちは悲しくなりました。ラジオを聴いてもらうことによって一人でもさみしくないと思ってもらえたら、ラジオによって一人でも多くの人が笑顔になったらという思いで、彼らは知恵と力を合わせて、それぞれの持ち味を生かしながら放送を続けていきました。

大切なときに、突然リーダーと連絡が取れなくなり、数日間行方不明になるという事件が起きました。残されたスタッフでやっていくしかないのですが、後で、リーダーの再就職にかかわることだったと分かりました。このことを通して、自分たちの結びつきが強くなっていることに気づきました。

ガレキとラジオ
(C)映画『ガレキとラジオ』製作委員会


放送期間も終わりに近づいたころ、彼らは大きなイベントを企画しました。それは、震災で結婚式を挙げることができなかったカップルや、津波で結婚写真を流された人のために、記念写真を撮り、その様子をラジオで生放送しようというものでした。タレントのはるな愛さんもこの企画に参加し、会場を盛り上げてくれました。裏方だけではく、ステージにも上って、スタッフたちの精一杯の放送がはじまります。

「出発式」と名づけられたこのイベントは、記念撮影に応募した4組のカップルとその家族だけでなく、会場に集まった1,000人の南三陸町の人々、そしてなによりも「FMみなさん」のスタッフたちの、新しい道を歩みだす「出発式」となりました。

役所広司さんの語りが、心にしみ入ります。


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