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 インポッシブル

2013年 5月

THE IMPOSSIBLE

インポッシブル

  • 監督:フアン・アントニオ・バヨナ
  • 脚本:セルヒオ・G・サンチェス
  • 撮影:オスカル・ファウラ
  • 出演:ユアン・マクレガー、ナオミ・ワッツ、トム・ホランド、
        サミュエル・ジョスリン、オークリー・ぺンダーガスト
  • 配給:プレシディオ

2012年 スペイン・アメリカ映画 1時間55分

  • 第85回アカデミー賞主演女優賞ノミネート
  • 第70回ゴールデン・グローブ賞主演女優賞ノミネート
  • ゴヤ賞(スペイン・アカデミー賞)14部門ノミネート
  • その他、多数

2004年12月26日に起きたスマトラ沖地震。タイのリゾート地で楽しい冬休みを過ごしていた、海外からの観光客に、大きな津波が押し寄せました。ビーチの椰子の木が大きくたわみ、その木々の間から美しいホテルに向かって猛烈な津波が押し寄せる映像は、まだ記憶に残っていると思います。日本からも多くの人が訪れ、犠牲者を出しました。「インポッシブル」は、スマトラ沖地震に遭遇した、実話に基づいたある家族の物語です。


物語


仕事の都合で日本に住むヘンリー(ユアン・マクレガー)は、冬休みをタイのビーチで過ごそうと、12月24日、カオラックビーチのホテルにやってきた。元医師の妻マリア(ナオミ・ワッツ)と3人の息子、ルーカス(トム・ホランド)、トマス(サミュエル・ジョスリン)、サイモン(オークリー・ぺンダーガスト)と、クリスマス・イブのイベントに参加し、幸せな時を過ごしていた。

26日、ホテルのプールで思い思いの時を過ごしていると、突然、地震が起き、なんだ???と思っていると海岸の椰子の木が一斉になびき、その向こうから巨大な波が押し寄せてきた。プールサイドで読書をしていたマリアは、この光景に、読書の本を閉じただけで身動きできないでいた。次の瞬間、ホテルのロビーのガラスとともに、津波に押し倒された。下の2人の息子と一緒にプールで遊んでいたヘンリーは、大きく襲いかかる津波を背に、離れたところにいる長男を見つけ「ルーカス!」と呼び、波に飲まれた。

インポッシブル
(C) 2012 Telecinco Cinema,S.A.U.and Apaches Entertainment, S.L.


押し寄せてくる津波に、木くずとともに流された。ルーカスを見つけたマリアは、流れてくるマットにつかまるようにと促した。どうにかマットにたどり着いたものの、2人の手は結ばれず、再びやってきた津波に流されてしまう。

だいぶ流され、波が引いて足がつくようになった。あたりは泥の海。2人は奥地に向かって歩き出した。前を歩く母の足を見えたルーカスは叫びそうになった。マリアの太ももの裏側が大きく裂け、骨が見えていたのだ。傷の状態を、ルーカスは母に言えなかった。

インポッシブル
(C) 2012 Telecinco Cinema,S.A.U.and Apaches Entertainment, S.L.


近くで幼子の泣き声が聞こえた。津波がまたやって来るから早く逃げようと言うルーカスを諭し、マリアはその子を抱きかかえた。3人は大きな木の上に避難し、やがて、土地の人々に助けられ、マリアは病院へと運ばれた。

マリアの身体は衰弱していったが、ヘンリーと2人の息子がどうなっているか分からない今、ルーカスのために死ぬわけにはいかないと思った。

話すことも大変になってきたマリアは、ルーカスに告げた。「困っている人を助けてあげて!」また、離ればなれになってしまうのではないかと不安なルーカスだったが、母の言葉に背中を押され避難所の中を歩いた。すると次々と声をかけられた。「○○をしらないか」「△△を探してくれ!」。

インポッシブル
(C) 2012 Telecinco Cinema,S.A.U.and Apaches Entertainment, S.L.


ルーカスの努力によって、一組の父と子が出会えた。その喜びを伝えようと母のベッドに向かったが、いるはずのベッドに母はいなかった。どこへ行ってしまったのか。容体が急変して亡くなったのではないか。「やはり、母の元から離れるのではなかった!」ルーカスは、後悔と怒りと不安に押しつぶされそうだった。

そのころ、ヘンリーは……。

インポッシブル
(C) 2012 Telecinco Cinema,S.A.U.and Apaches Entertainment, S.L.


 

襲ってくる津波を見えて、何もできない恐怖の瞬間と、何度となくやってくる津波の濁流の中でもがく姿は、真に迫るものがあります。当然ですが、東日本大震災での津波の光景や、津波にのみ込まれながらも助かった人々の証言を思い出し、重ね合わせて見えました。避難所となった場所の混乱。土地の人々による救助や治療施設、みなが精一杯のことをしているのですが、対応しきれず混乱が起きます。そして、呆然としていた被災者たちが行動を起こすようになります。

家族が波に飲まれてバラバラになったにもかかわらず、父と母、それぞれの元に奇跡的に子どもが引き寄せられました。しかし、混乱の状況の中で、ちょっとした行き違いから、すぐ離ればなれになってしまう可能性のある被災地でした。そんな中でも、他者を思い、他者のために働くことを、母は子に教えます。

家族とは何なのか、家族のありがたさをかみしめる作品です。


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