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 楽隊のうさぎ

2013年11月

 

楽隊のうさぎ

  • 監督:鈴木卓爾
  • 原作:中沢けい(『楽隊のうさぎ』新潮文庫刊)
  • 脚本:大石三知子
  • 音楽監督:磯田健一郎
  • 演出:川崎航星、井手しあん、鶴見紗綾、井浦新、鈴木砂羽
  • 配給:太秦、シネマ・シンジケート、浜松市民映画館シネマイーラ

2013年 日本映画 1時間37分

  • 第26回東京国際映画祭 日本映画スプラッシュ部門正式出品作品

吹奏楽が盛んな浜松、音楽の町・浜松。この浜松の魅力を映画をとおして世界に伝えたいとプロジェクトが立ち上がり、浜松の市民を巻き込んでの映画ができました。巨匠木下恵介を生んだ浜松出身の若手監督鈴木卓爾氏を監督に迎え、吹奏楽をとおして成長する子どもたちを描いた作品です。

吹奏楽部やクラスの生徒たちは、すべてオーディションで選ばれました。実際に一年かけて楽器を練習し、ステージの上での演奏を完成させました。


物語


花の木中学1年生の奥田克久(川崎航星)は、引っ込み思案で無口な男の子。学校が終われば、いち早く家に帰り、学校にいる時間をできるだけ短くしたいと思っている。しかし、学校では、全員部活をするよう義務付けられていた。小学生からの仲間だった相田守(百鬼佑斗)からは、一緒にサッカー部に入ろうと言われていた。気が進まないのだが、言い返すことはできないでいた。

昼休み、校庭から演奏の音が聞こえてきた。窓から外を見ると、吹奏楽のメンバーが部員勧誘のために演奏をしているのだった。ある日、廊下を歩いていると、廊下の突き当たりにうさぎがいるのが見えた。不思議に思っていると、うさぎは教室の中に入っていった。後を追った克久が入った教室は、吹奏楽部の練習室だった。

こうして克久は、学校の中で練習時間が一番長いと言われる吹奏楽部に入った。新入部員は、パーカッションに克久と2人の女子、トロンボーンに2人、フルート1人だった。先輩の小泉雅美(鶴見紗綾)は、何かと克久に心をかけてくれた。

楽隊のうさぎ
(C) 2013『楽隊のうさぎ』製作委員会


自分用のバチを買いに楽器店に行った克久は、フルートを手にした、親友部員の田中朝子(井手しあん)と出会う。朝子は、父親から譲り受けたフルートを吹いてみたいと吹奏楽部に入ったのだった。克久は、家でバチ練習をしていた。

吹奏楽部の顧問教師は、森勉先生。みんなは、「ベンちゃん」と呼んでいた。音出し、パート練習、セクション練習があり、ベンちゃんが指揮棒を持つと合奏が行われた。

コンクールが近づいてきた。パート毎に楽譜が渡され練習が始まった。しかし、今回克久は、もうひとりの女子とともに、メンバーには選ばれなかった。コンサート当日は、ステージで演奏するメンバーと別行動で、複雑な思いだった。コンサートが終わると、3年生は引退し、受験勉強へと入っていった。ティンパニーを担当していた小泉雅美(鶴見園子)も引退だった。彼女は、自分が集めた楽譜を克久に託していった。ベンちゃんから、「ティンパニーをやらないかと言われたが、自信がない克久は迷っていた。小泉は言った。「ティンパニーだっていろいろな表情がある。克っちゃんがやるかどうかは、自分で決めることなんだよ。ティンパニーをどう響かせるかは、克っちゃん次第だよ」。

楽隊のうさぎ
(C) 2013『楽隊のうさぎ』製作委員会


やがて、また春が巡り、新しい1年生たちが入ってきた。花の木中学では、入部の勧誘が行われていた。克久たち吹奏部も、新入部員を迎えた。

 

主人公の克久は、何を言われてもなかなか反応をしめさず、何を思っているのか分からない感じです。こういうゆっくりした展開で映画が成り立っていくのかと思われるのですが、これが等身大ドラマとなって、実際の中学生の日常はこんな感じなのかなと思います。先輩が後輩の指導にあたっていて、中学校時期の一年の成長は大きいものがあると感じます。

3月に開かれる定期演奏会の練習を始めたときの初めての合奏で、指揮を止めて指導するベンちゃんの言葉がステキです。「人の話を聞く。そして、話し始める。アンサンブルの中で。同じ楽器を使っていても、人の声と同じで、音色はそれぞれ違います。お互いの音を、もっとよく聞かないと。相手を理解しようとしないと、良いバランスは作れません」。

仲間と一つになっていく吹奏楽をとおして、自分の意見をはっきり言うことができるようになり、決断できるようになった克久の成長がうれしいです。


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