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 武士の献立

2013年12月

武士の台所

  • 監督:朝原雄三
  • 脚本:柏田道夫、山室有紀子、朝原雄三
  • 音楽:岩代太郎
  • 演出:上戸彩、高良健吾、西田敏行、余貴美子、夏川結衣
  • 配給:松竹

2013年 日本映画 2時間1分


NHK朝の連続ドラマ「ごちそうさん」は、家族のため、他者のために心を込めた料理を作ることの楽しさ、すばらしさを日本中に提供していますが、映画「武士の献立」も、刀を持って藩のために仕えるだけが武士の働きではなく、包丁を持って藩のために貢献することも、功を奏する働きであることを教えています。 加賀藩には、実際に存在した包丁侍・舟木伝内と安信親子が書き残した料理本「料理無言抄」が残っています。そこには、栄養価を考え、素材を生かした調理法が記されていました。今でも通じる数々のレシピが残されています。この料理本から、映画の構想が浮かびました。

物語


浅草で有名な料理屋の娘として生まれた春(上戸彩)は、小さいころから敏感な舌の持ち主だった。火事で家族を亡くした春は、加賀藩江戸屋敷で、六代目藩主の前田吉徳の側室・お貞の方(夏川結衣)に仕え、確かな舌と料理の腕で皆に喜ばれていた。

代々、加賀藩の台所方として働く舟木家。舟木伝内(西田敏行)は、藩内で一番の料理人だ。江戸屋敷で台所を預かる伝内は、だれも答えることのできなかった汁椀「鶴もどき」の中身を言い当てた春の、舌の確かさと料理の腕の見事さをみて、ぜひ、息子の嫁にと懇願する。

武士の台所
(C) 2013「武士の献立」製作委員会


勝ち気な性格で、一度離縁を経験している春は、お貞の方のもとで生涯を過ごしたいと願ったが、お貞の方に勧められ、長い旅を経て加賀にやってくる。

姑の満(余貴美子)から喜んで迎えられた春だが、年下の夫の安信(高良健吾)からは、「古狸(ふるだぬき)」と呼ばれ、受け入れてもらえない。安信は「武士こそは、刀を持って仕えるべきだ」と、武道の稽古は重ねるが、毎日出向く仕事場の台所では、料理をさげすみ、包丁さばきは下手だった。

嫁を迎えた安信が舟木家の後継者として認めてもらうための宴会の席上で、春が出しゃばって料理したことに、安信が腹を立てる。安信の罵倒に怒った春は、包丁の腕比べを提案する。安信が勝てば離縁、春が勝てば料理指南をすることになる。安信は勝負に負け、春から料理指南を受けることになる。次第に腕を上げていく安信は、昇進試験にも合格し、順調に台所方を勤めていた。

武士の台所
(C) 2013「武士の献立」製作委員会


江戸屋敷から戻った伝内は隠居を決めるが、藩内では、改革派と保守派の対立が大きくなっていった。新藩主が江戸から戻り、着任の祝いの席が設けられることとなる。宴のために、伝内から補佐を命じられた安信だが、仲間を助けるため反対派の暗殺計画に加わろうとする。春は夫を助けようと、刀を抱き家を飛び出すが……。

武士の台所
(C) 2013「武士の献立」製作委員会


 

八代目将軍・吉宗のとき、安信が、仲間の行動に参加しようとした騒動は、加賀騒動です。改革と保守との血なまぐさい騒動の中でも、台所侍たちはお城の生活を、毎日運営していかなくてはなりません。伝内は言います。「包丁侍のなすべきは、饗応の宴をもって、加賀にかつての晴朗な気風を取り戻すこと」。そんな男たちの働きの中で、上戸彩さんが夫を立てたしっかりした女房をさわやかに演じています。 どんな仕事であれ、自分に与えられた道を、不満いっぱいで当たっていればマイナスの効果しか味わいませんが、創意工夫していくおもしろさをつかんだとき、それは天職となります。生き方、夫婦愛、嫁を思う両親、組織の中での自分の働き、料理の奥深さ、礼節の大切さなど、いろいろなことに気付かされた作品です。


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