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 父は家元

2014年 1月

父は家元

  • 脚本・監督:高野裕規
  • 音楽:喜多郎
  • ナレーター:小堀優子
  • 演出:小堀宗実、坂東三津五郎、小堀正大、熊倉功夫、松岡正剛、遠藤隆雄、鈴木勝彦、矢頭美世子、潮田洋一郎
  • 配給:フイルムヴォイス

2013年 日本映画 1時間31分


何の家元かと言えば、茶道です。茶道と言えば、素人でも知っているのが表千家、裏千家ですが、この映画の主人公は、小堀遠州を祖に持つ遠州流宗家の13世家元小堀宗実氏です。

将軍の茶道品若となった遠州は、わずか一万石の大名でした。普通だったら将軍に直接会うことはできない身分ですが、作事(さじ)奉行として多くの城、茶室を造りました。武術ではなく、世を治めるための建築を目指し、千利休が閉鎖的な茶室を作っていったのに対し、遠州は相手の必要にあわせたさまざまなものを作り出していく開かれた茶室を表現していきました。

父は家元
(C) 2013 Film Voice inc. All right reserved.


青山のオラクルビル24階、ここに広がる和の空間「Japanese Tea Room」の設営のために、細かいところまで気遣って設計者と語り合う家元の姿がありました。超近代的なビルの中に、非日常の世界ができあがりました。日本文化に触れる空間は、とても心が落ち着きます。一服のお茶をとおして、そこに集う人々の心が通い合うという、茶道の本質が求められています。家元が追求する空間が、世界の人々を招く「Japanese Tea Room」に、みごとに表現されました。

映画「父は家元」は、430年の伝統を持つ遠州茶道の世界、家元とその家族の生活を、3年間にわたって撮影した作品です。語り手は、家元の次女、優子さんです。「師走」から始まって月を追って行われる遠州茶道の行事、年を越え新年を迎える家元の催事、季節のお茶会の様子を追いながら、そこに遠州茶道の歴史と特徴、一服のお茶で客をもてなすための家元の心配り、茶器、掛け軸、活け花の準備、茶道をとおして家元が求めていることなどが語られていきます。

父は家元
(C) 2013 Film Voice inc. All right reserved.


父は家元
(C) 2013 Film Voice inc. All right reserved.


茶道は総合芸術と言われますが、お手前の「お茶を入れる」だけが茶道ではなく、時間的にも、空間的にも、さまざまなことが「一服のお茶」のために用意されていることがわかりました。富士山の裾野のような広がりがあります。裾野にあるさまざまなことが、肥やし、教養、知識となって、山頂のほんの少しの「お茶を入れる」所作とお茶をいただくことに集中されていきます。裾のが広ければ広いほど、一服のお茶は深いものになるのです。

「和食」がユネスコ無形文化遺産になり、日本文化が見直されていますが、まさにこのお茶の世界こそ、和の伝統文化の総合です。

映像をとおして、茶道の静寂な世界が、キリスト教の祈りの世界に通じていると思われました。神のために静かに自分を置くことと通じています。見終わって、茶道の世界の静寂が心に満ちていました。再度、じっくりと見てみたいと思いました。


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