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いのちのコール ~ミセスインガを知っていますか~

2014年 5月

いのちのコール

  • 監督:蛯原やすゆき
  • 脚本:南木顕生
  • 企画: 渡邉眞弓
  • 音楽:mojin
  • 医療監修: 宮城悦子
  • 出演:安田美沙子、室井滋、山口賢貴、国広富之、筒井真理子、中野良子
  • 配給:リトルバード

2013年 日本映画 1時間26分


今、若い女性の間で多くなっている子宮頸がん。年間3,500人の女性が子宮頸がんでいのちを落としています。早期発見、早期治療が大切な子宮頸がんを、女性だけでなく、広く知ってもらいたいという、蛯原やすゆき監督と企画者の渡邉眞弓の思いから生まれた作品です。押しつけがましくなく、偏見や体験者の思いを引き出しながら、病気についての正しい知識を表しています。

いのちと結びつけられる病気を、ひとりで抱え、悩み苦しむのではなく、他者の支えが必要なのだという現実に迫ってくる内容です。若い世代が、さらに男性がメガフォンを取ったということで、女性としてはうれしく思いました。

SNSやLINEなど、人と人を綿密に結びつけているメディアとして若い人々を中心に圧倒的な支持を得ていますが、ラジオという前世代のものと思われているメディアが、今も、多くの人々に、親しみを持ったマスメディアとして影響しています。声をとおして「個」に語りかけるパーソナリティー、しかし、その語りかけを聞いている多くの人々は、マスです。マスと個という、ラジオの持つ力を改めて知りました。


物語


マユミ(室井滋)がラジオ・パーソナリティーをつとめる「ジェットストリーム」は、最後の放送日を迎えていた。スタッフは、25年の歴史を閉じる最後の日を、シナリオの通り、長い歴史を懐かしむ思いで満ちた内容で進めようとしていた。いつもとかわらずに明るく行こうというマユミの思いに、リスナーの最終回を惜しむ声が寄せられていた。

そんな中、「インガ」(安田美沙子)という名の女性から、自殺をほのめかす内容の電話が入った。マユミとのやりとりの中から、彼女が子宮頸がんで、身体の不調から仕事もやめ、生きる希望を失っていることが分かる。

プロデューサーの青山(国広富之)は、暗い内容の電話は早く切って、最終回にふさわしい内容にしようとやきもきするが、マユミは、今、断たれようとしているいのちが、唯一つながっているこの電話を切ることができないと、インガに自殺をやめさせようと話しかけていく。

いのちのコール
(C)「ミセス インガを知っていますか」製作委員会


しかし、CMが入り、インガとの電話は切れてしまう。マユミは、「インガさん、もう一度電話をかけてください!」と必死で訴える。

マユミは、ちょうど他の番組の打ち合わせに放送局に来ていた医師のサッチャン先生(筒井真理子)をスタジオに招き入れ、子宮頸がんについて詳しく話してもらうことにした。すると、自分も子宮頸がんを患っているというリスナーからの声が次々と番組に届き始め、子宮頸がんの患者たちの現実が明らかになっていった。

ちょうどその番組を、車で移動中の高志が聴いていた。高志は、インガという名を聞いてすぐ、たまきだと分かった。たまきと高志は結婚を前提に同棲していたが、結婚直前に、たまきが子宮頸がんだと分かったのだった。医師は、手術で子宮と卵巣を取るので、子どもは望めないと二人に告げた。結婚をやめようと泣くたまきに、高志は「自分がたまきを守る」と約束したのだった。

いのちのコール
(C)「ミセス インガを知っていますか」製作委員会


しかし高志は、手術の後、身体を思うように動かせず、家に閉じこもりになったたまきと気まずくなり、たまきは母親(中野良子)に連れられて実家に帰っていった。高志は必ず迎えに行くと言ったが、実行はできないまま、月日が流れていた。

再び、インガから電話がかかってきた。マユミは、居場所を聞きだそうとするが、たまきの意識は薄れていった。マユミとインガのやりとりを、リスナーたちは心配しながら聞いていた。

 

NHK朝の連続ドラマ「花子とアン」で、極貧の暮らしの中でも、あたたかく子どもたちを見守るおかんを演じている室井滋が、凜として、人情あふれ、頼りがいのあるラジオのパーソナリティーとして登場します。苦しんでいる人を腕に抱え、心の底から思っているという愛深き思いがにじみでてくるマユミの姿に、演技を越える篤い思いを感じました。名優の演技は、見る人の心を安心させます。

同じく朝ドラの「カーネーション」で、三女の小原聡子(モデルはコシノミチコ)を演じた安田美沙子が、病いに苦しむヒロインを、はかなげに演じます。


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