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イラク チグリスに浮かぶ平和

2014年10月

英題:PEACE ON THE TIGRIS

イラク

  • 監督・撮影:綿井健陽
  • 出演:アリ・サクバン、アリの家族、アリの父サクバン・サベル、アフメド・ヤシン、サファ・ハシム
  • 配給:東風

2014年 日本映画 1時間48分


米軍のイラクは「大量破壊兵器を隠している」という疑いから始まったイラク戦争。他の国も参加し、日本もこの戦争を支持し、自衛隊を派遣しました。10万人以上の犠牲者を出しましたが、結局、大量破壊兵器は見つかりませんでした。空爆開始から3週間後、バグダッドが制圧され、24年間におよぶフセイン政権は倒されました。当時、バグダッドに滞在していたジャーナリストの綿井健陽氏は、ホテルの窓から、空爆の爆音と大きな火柱を見ました。商店街の店は破壊され、道には亡くなった人々の血が流れていました。

あれから10年が過ぎました。長年イラクを撮り続けているは綿井氏は、今、空爆を受けたバグダッドの街はどうなっているのか、また、当時撮影した家族はどうなっているのかを知るために、2013年、イラクに向かいました。映画「イラク チグリスに浮かぶ平和」は、バグダッドに住むある家族を中心にした、この10年間の歩みをたどる作品です。

イラク
(C) ソネットエンタテインメント/綿井健陽


テレビで見たフセイン像の倒壊、人々は喜んでいました。しかし、綿井氏の映像には、テレビで見た光景とは違う人々の姿が映っていました。バグダッド陥落後も米軍の攻撃は続き、一般市民が犠牲となり、病院では多くの子どもたちが亡くなりました。バグダッド市内北部に住むサクバン一家。主人のアリが子どもたちと朝のあいさつをして家を出た直後、家が空爆され、慌てて家の中に入ると、3人の子どもの変わり果てた姿がありました。

イラク
(C) ソネットエンタテインメント/綿井健陽


2007年にイラクを訪ねたとき、綿井氏はアリと再会しました。アリは、弟を武装組織に射殺されたと言いました。2013年に訪れると、イラクが民主化されて10年を経たにもかかわらず、何も変わっていませんでした。アリとの6年ぶりの再会を期待していたのですが、アリは2008年、銃を持った男たちによって射殺されていました。

10年前、27歳の若者だったサファ・ハシムは、フセインの像が倒れたとき、自由がやってくると思っていました。しかしその後、仕事がなく米軍キャンプ内で働くようになりました。「今は、自由も民主主義もない」と言います。「この責任はどこにあるのか?」と問います。彼は、自分にも責任があると言います。「黙っていたから」と。

米軍のクラスター爆弾を拾って右腕を失ったアフメド・ヤシンは、夜、チグリス川に船を出し家族で遊びました。船の上が、ゆいいつ、安心できる場だと言います。

イラク
(C) ソネットエンタテインメント/綿井健陽


 

続く爆撃と家族や友人の死という、不安で厳しい日々の中で生きているイラクの人々。アメリカは、イスラム国の勢力を抑えるため、イラクで、またシリアで空爆を始めました。この国に、この地域に平和は来るのでしょうか? チグリス川上でしか味わえない平和が、毎日味わうことができるようになりますように。


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