お薦めシネマ
天空からの招待状
2015年 1月
- 監督・撮影:チー・ポーリン
- 製作総指揮:ホウ・シャオシェン
- 音楽:リッキー・ホー
- 中国語版ナレーション: ウー・ニエンジェン
- 日本語版ナレーション: 西島秀俊
- 配給:アクセスエー、シネマハイブリッドジャパン
2013年 台湾映画 1時間33分
- 2013金馬奨最優秀ドキュメンタリー賞受賞
日本と同じ島国の台湾。沖縄から、さらに先の島をたどっていけばつながる、日本に近い島です。面積の3/4が山で、中央山脈をはじめ5つある山脈には、標高3,000m以上の山々が連なります。豊かな緑で覆われる山、つきささるような岩肌の山、水蒸気を出している山、青色が美しいカルデラ湖。深い渓谷をたどっていくと、なだらかな地をめぐることなく、すぐ海に出てしまいます。このように空撮による映像だけで構成されている映画「天空からの招待状」は、まず、美しい台湾の山々を、眺めることからはじまります。
(C) Taiwan Aerial Imaging, Inc.
企画・監督・撮影・編集を手がけたチー・ポーリン監督は、「國道新建工程局」職員として、長い間、空の上から台湾の風景を撮り続けてきました。そんな中で、愛する台湾が、年とともに変化していく様を見て、山が、大地が脅かされていく危機感を抱きました。そして彼は、生活を捨て、借金を抱えてこの映画を製作したと言います。そんな彼の熱意に、台湾の巨匠ホウ・シャオシェン監督が製作総指揮を買って出ました。
壮大なオーケストラの音楽が流れる中、美しい山々や田園を見つめていくと、いつしか、画面は険しい場面へと変わっていきます。ここ10年の激しい気象変化による洪水の被害、大量に流れる山からの土砂による海岸線の破壊。気象の変化は、産業をも脅かしていきました。
空から見ることによって、広く大きな視野でその危機を見ていくことができます。それは、台湾だけの問題ではなく、日本にも言えることです。映画が伝える台湾の危機は、世界への警告ともなっています。
美しい山から、豊かな田畑へ、そして波が寄せる海岸へ、さらに人々が暮らす町や大都市へ。空からの映像は、人々の日常生活を映しているとともに、人間の目線で横を見ても見つけることができない、さまざまなものを見せてくれます。
(C) Taiwan Aerial Imaging, Inc.
ナレーターの西島秀俊氏の、落ち着いた優しい声は、見る者の心にしっかりと問題提起をしてくれます。
有機栽培で、新しい人間と大地のあり方を探る若者たちの農作業を上から眺めながら、監督のメッセージが語られます。 「大地に真心を持って接すれば、大地を子孫に残すことができる。子孫に残す大地で、一時的な欲望を満たしてはならない。なぜなら、わたしたちは一時的な存在だから。わたしたちは、子孫に何を残すのか」。
(C) Taiwan Aerial Imaging, Inc.
今、人類はどう生きたらいいのか。一緒に考えるための大切な作品です。