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悼む人

2015年 3月

悼む人

  • 監督:堤幸彦
  • 原作:天童荒太(『悼む人』文春文庫刊)
  • 脚本:大森寿美男
  • 音楽:中島ノブユキ
  • 主題歌:熊谷育美
  • 出演:高良健吾、石田ゆり子、井浦新、貫地谷しほり、
       平田満、椎名桔平、大竹しのぶ
  • 配給:東映

2014年 日本映画 1時間46分



あまり表には出せない家族の問題について、その時代の先頭を切って小説として発表している天童荒太氏の直木賞を受賞した『悼む人』の映画化。

不慮の死を遂げた人を探し出しては、悼むために全国を歩いている坂築静人(高良家健吾)の、悼む旅の物語ですが、彼の周囲の人々にもそれぞれの物語があり、それらがからまってひとつの作品となっているように思えます。いのちのつながり、亡くなった人をどう弔うかを考えさせられる作品です。

 悼む人
(C) 2015「悼む人」製作委員会/天童荒太

物語

ある事故現場で静人の祈る姿を目撃して興味を持ち、彼を取材し始める蒔野抗太郎には、死期の迫った父親がいた。後妻の理々子が、父親が会いたがっていると、度々、伝えに来るのだが、彼は家に帰ろうとしない。母の死のときの確執があり、父親を許すことができないでいたゴシップ記事で鳴らしてきたが、このごろかげりが見えていた。

蒔野は、静人の母親・巡子(大竹しのぶ)に、人を悼むために旅をしている静人をどう思うかとインタビューする。巡子は末期ガンで、在宅で最期を迎えようとしていた。夫(平田満)と、静人の妹の美汐(貫地谷しほり)が世話をしていた。美汐のお腹の中には、付き合っている人との間の新しい命が宿っていたが、別れ話が出ていた。

静人の悼む姿を見た奈義倖世(石田ゆり子)は、その姿にひかれ、静人の後をついて一緒に旅をするようになる。倖世は、夫・甲水朔也(井浦新)に「殺してくれ」と頼まれて彼を殺したが、刑を終えて出所したのだった。しかし、いつも自分の傍らにいる夫の亡霊に苦しんでいた。

 悼む人
(C) 2015「悼む人」製作委員会/天童荒太


悼む人を探して旅を続ける静人も、心に傷を持っていた。しかし、倖世との道連れによって癒されていき、蒔野もある事件によって人生を変える。巡子のいのちは、娘の美汐の出産に引き継がれ、倖世もその辛い人生から立ち上がる。

 

登場人物たちは、特異な状況に置かれている人びとかもしれませんが、そのひとりひとりがもっている傷や辛さは、どの人にも、心当たりがあることに思えます。公開が、川崎中学殺人事件のすぐ後でした。中に出てくるシーンが、この事件と重なり、重い心になってしまいました。子を思う親、親を思う子。妻を、夫を思う夫婦の愛。互いの思いが少しずれたとき、悲しい事件となってしまいます。

死を迎える巡子を演じる大竹しのぶの透き通った顔がすばらしく、「いのち」を感じさせられました。


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