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お薦めシネマ
パプーシャの黒い瞳
2015年 4月
- 監督・脚本:ヨアンナ・コス=クラウゼ、クシシュトフ・クラウゼ
- 音楽:ヤン・カンティ・パヴルシキェヴィチ
- 出演:ヨヴィタ・ブドニク、パロマ・ミルガ、
ズビグニェフ・ヴァレリシ、アントニ・パヴリツキ - 配給:ムヴィオラ
2013年 ポーランド映画 2時間11分
2014年、61歳で亡くなったポーランドを代表する監督の一人、クシシュトフ・クラウゼの遺作となった作品です。パプーシャの愛称で呼ばれたジプシーの女性詩人・ブロニスワヴァ・ヴァイス(1910~1987)の生涯を、衣装や馬車、大道具、小道具にいたるまでジプシーの生活を注意深く再現して撮影しました。パプーシャの生きた時代は、第一次世界大戦によって3国が滅亡してポーランドが123年ぶりに国家として成立し、ドイツ軍がポーランドに進行、第2次世界大戦が終わり、独立したものの国が2分されるという激動の時代でした。
物語
ジプシーのことばで人形を意味するパプーシャという名を付けられた女の子は、人々から愛されてて育ちました。ジプシーたちは、幌馬車に荷物を積み、場所を移動して暮らしていました。大地で育ち、大地で生き、森の存在が大切でした。ある場所に滞在していたとき、一本の木の穴に隠された盗品を見つけたパプーシャ(パロマ・ミルガ)は、その中の紙に書かれた文字にひかれます。ジプシーでは、文字は呪文、悪魔の力として嫌い、彼らは文字を持っていませんでした。パプーシャは、町の店の女主人に頼み込んで文字を学びます。
(C) ARGOMEDIA Sp. z o.o. TVP S.A. CANAL+ Studio Filmowe KADR 2013
ジプシーたちの生活を知ろうと彼らに同行していた詩人のフィツォフスキ(アントニ・パヴリツキ)は、パプーシャ(ヨヴィタ・ブドニク)がときどき語ることばを聞き驚きます。それは、すばらしい詩でした。フィツォフスキから詩を書きためておくようにと言われたパプーシャは、ジプシーの生活から離れたフィツォフスキに、紙切れに書きためた詩を送りました。やがてそれが詩集として出版され、話題となります。詩を書いてお金が入るという初めての出来事に、ジプシー仲間たちも喜び、火のまわりに集まって歌いました。パプーシャの詩とフィツォフスキの書いたジプシー研究の本が出されると、様子は一変します。その本によって、ジプシーの生活がポーランドの人々に広く知られるようになりましたが、その評判が長老の耳にも入りました。長老は、詩の出版はジプシーのことばを売る行為であり、ジプシーの名誉を傷つけ、一族の破滅につながると非難したのです。
傷ついたパプーシャは、本を焼いてほしいとフィツォフスキに求めますが・・・。
(C) ARGOMEDIA Sp. z o.o. TVP S.A. CANAL+ Studio Filmowe KADR 2013
美しく雄大な自然を背景に、馬車で移動するジプシーの生活は日本にはないもので、とても興味深く観ました。ジプシーはヨーロッパ各国に存在しています。少数民族の集団生活で、土地に定住せず馬車などで各地を移動し、独特の伝統文化を持っています。しかし楽器演奏などでの生活は貧しく、差別や迫害を受けています。各国はジプシーたちに対して定住対策を進めています。
映画の全編に、パプーシャの詩が流れます。その詩から、壮大な自然の中で暮らすジプシーたちが持っている、別の次元の深い世界観が伝わってきます。