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奇跡の人 マリーとマルグリッド

2015年 5月

MARIE'S STORY

 奇跡の人

  • 監督・脚本:ジャン=ピエール・アメリス
  • 脚本:フィリップ・ブラスバン
  • 音楽:ソニア・ヴィーダー=アセルトン
  • 出演:イザベル・カレ、アリアナ・リヴォワール
  • 配給:スターサンズ、ドマ

2014年 フランス映画 94分

  • 第67回ロカルノ国際映画祭 ヴァラエティ・ピアッツァ・グランデ賞受賞


タイトル「奇跡の人」は、三重苦のヘレンケラーを思い出すことでしょう。マリーとマルグリットの映画も、19世紀末に実際に生きたマリー・ウルタンと、生命をかけてマリーに教育を与えた修道女マルグリットの実話に基づく物語です。

物語

生まれながらにして、見えず、聞こえず、話せないという苦しみを背負ったマリーは、貧しい農家の父と母に育てられていたが、聴覚障がいの少女たちの学校に入るために、父親に連れられてきた。寄宿舎で暮らすために、父親はマリーを置いていこうとするが、目を離したすきにマリーは逃げ、捕らえようとするシスターたちの手を逃れて、野生動物のように木の上に逃げ上ってしまう。

修道院長は、若いシスターマルグリットに、マリーを木から下ろすよう促す。木の上でおびえ固まっているマリーの手に、マルグリットが恐る恐る触れようとすると、マリーはマルグリットの指先に反応を返すかのようにかすかに指を動かした。もう少し・・・、と思った瞬間、修道院長の声が響き渡り、マリーは再びおびえる野生動物へと戻る。結局、この学校では手に負えない断られたマリーは戻されてしまう。

マリーとのかすかな指の触れあいから、マリーと意思を通わせることができると確信したマルグリットは、マリーを学校に呼ぶようにと必死で修道院長に頼むが、心臓が弱いマルグリットには無理だと断られる。しかし、必死の願いでマルグリットは許可を得、マリーを迎えに向かう。意気揚々と歩くマルグリットだったが、マリーを寄宿舎に連れて帰ることは、並大抵のことではなかった。しかし、指先で物に触れるというこを体験したマリーは、「知る」ということへのきっかけをつかむ。

 奇跡の人
(C) 2014 - Escazal Films / France 3 Cinema - Rhone-Alpes Cinema

ジプシーたちの生活を知ろうと彼らに同行していた詩人のフィツォフスキ(アントニ・パヴリツキ)は、パプーシャ(ヨヴィタ・ブドニク)がときどき語ることばを聞き驚きます。それは、すばらしい詩でした。フィツォフスキから詩を書きためておくようにと言われたパプーシャは、ジプシーの生活から離れたフィツォフスキに、紙切れに書きためた詩を送りました。やがてそれが詩集として出版され、話題となります。詩を書いてお金が入るという初めての出来事に、ジプシー仲間たちも喜び、火のまわりに集まって歌いました。パプーシャの詩とフィツォフスキの書いたジプシー研究の本が出されると、様子は一変します。その本によって、ジプシーの生活がポーランドの人々に広く知られるようになりましたが、その評判が長老の耳にも入りました。長老は、詩の出版はジプシーのことばを売る行為であり、ジプシーの名誉を傷つけ、一族の破滅につながると非難したのです。

傷ついたパプーシャは、本を焼いてほしいとフィツォフスキに求めますが・・・。

 奇跡の人
(C) 2014 - Escazal Films / France 3 Cinema - Rhone-Alpes Cinema


 

実際に聴覚に障がいを持つアリアナ・リヴォワールが、マリーを演じます。自分のために必死になってくれる人がいるという体験が、心の安定を生み、物を知るということの喜びが、人を変えていきます。

献身的なマルグリットの姿と、マリーが人間らしく生き成長していく、いのちといのちのかかわりの姿に感動します。また、2人を見守る修道女たちの存在も、この映画に味わいを与えていて、心に残るすばらしい作品です。



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