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日本のいちばん長い日

2015年 8月

 日本のいちばん長い日

  • 監督・脚本:原田眞人
  • 原作:半藤一利
  • 音楽: ローレント・ピティガント
  • 出演:役所広司、本木雅弘、松坂桃李、山崎努
  • 配給:アスミックエース

2015年 日本映画 2時間16分



2010年に公開された映画に、「日本のいちばん長い夏」という作品がありました。「文藝春秋」が昭和38年に雑誌のために企画した、原爆投下から、ソ連の参戦、終戦を振り返った座談会の様子を描いたものです。映画は、その当時文藝春秋社の編集部員だった半藤利一氏の原作によるもので、座談会に集まった人々は、俳優のほかに、大学教授、作家、ジャーナリスト、脚本家、漫画家などが、ゆかりの人を演じました。いったいあの戦争は何だったのか、終戦に向けてどのような動きがあったのかを、一般市民、外務省、駐ソ連大使、陸軍大佐、「回天」特攻隊員、南方にいた兵士など、さまざまな立場からの話が、あの戦争を浮き彫りにしていきました。

この夏、「日本のいちばん長い日」が、8月8日に公開されました。同じ半藤利一氏の原作によるもので、戦争を終わらせるための動きと、終わらせることによって起きた混乱を描いたものです。

物語

1945年4月、枢密院議長の鈴木貫太郎(山崎努)に、総理大臣にと声がかかった。77歳という高齢であると断るが、昭和天皇(本木雅弘)から「頼むから」と言われ、引き受けることにする。長男が秘書官になると名乗り出て鈴木を助け、さっそく組閣を始める。重要なのは、陸軍大臣だ。天皇が懐かしがっていたという阿南惟幾陸軍大将(役所広司)の名があがる。

 日本のいちばん長い日
(C) 2015「日本のいちばん長い日」製作委員会

 日本のいちばん長い日
(C) 2015「日本のいちばん長い日」製作委員会

 日本のいちばん長い日
(C) 2015「日本のいちばん長い日」製作委員会

ヒトラーが亡くなりナチスが崩壊した。5月25日、東京はB29の攻撃を受け、宮城の宮殿が焼け落ちた。宮城の地価防空壕に集まった閣僚たちを前に、天皇は戦争の終結に向けて努力するよう希望すると告げた。

元首相の東条英機が陸軍省軍事課にやってきて、若い将校たちに向かって本土決戦あるのみと発破をかけた。しかし、女子学生たちが必死の決意で訓練しているのは竹槍という状態だった。この姿に象徴されているように、日本には、すでに戦える武器は無くなっていた。

7月26日、ポツダム宣言が出された。阿南は拒否を主張したが、鈴木は静観を決めた。しかし、8月6日、広島に原爆が落とされ、広島の町が焦土と化したこと、また9日にソ連が参戦したことを告げられると、鈴木は、戦争はこの内閣で決着をつけると決めた。天皇の責任を負わせないために、また大本営と内閣の関係など、終結に向けてどのようにしていくか、鈴木は思案した。また、最後の一人になっても戦うと意気込む陸軍の将校のクーデターを避けようと、阿南の苦悩が始まった。天皇は、国民の存続を守ることが自分の役割であり、国民の生命を守ることが第一だと語る。

戦争継続を主張する阿南がクーデターを決行すると信じている畑中健二少佐(松坂桃李)らは、阿南の自宅を警護するため憲兵を配置した。

 日本のいちばん長い日
(C) 2015「日本のいちばん長い日」製作委員会


 

2時間16分という長さを感じないほど、内容に引き込まれ、一気に見てしまいました。陸軍と海軍、そして近衛師団。軍隊が存在している社会というのが想像できませんが、この映画を見て、軍が存在し、さらに政治に関わっているという社会は、恐ろしいことと思えました。参謀室にいる優秀な将校たちは、机上での作戦を論じ、悲惨な戦場を知らないのです。一番大切にしなくてはいけないのは何なのか、現状と将来を冷静に見ているのは天皇でした。

もっと早く、原爆投下の前に、いえ、沖縄戦の前に、さらに東京大空襲の前に、終戦を決断することはできなかったのかと思いますが、天皇の思い、軍との関係、軍の中でもトップとその下の兵士との関係など、難しい中での終戦の決断です。戦前と似たような空気が漂いはじめているという今、戦争を止める決断をする人々のドラマを見ることは大切だと思いました。いろいろと考えるテーマを提供しています。



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