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十字架

2016年 2月

 十字架

  • 監督・脚本:五十嵐匠
  • 原作:重松清『十字架』(講談社文庫)
  • 主題歌:lecca
  • 出演:小出恵介、木村文乃、小柴亮太、永瀬正敏、富田靖子
  • 配給・制作:アイエス・フィールド

2015年 日本映画 122分



疲れ始めた40歳の男性の家庭生活を描いた『ビタミン』、定年を迎えた団地のオヤジたちを取り上げた『定年ゴジラ』、ニュータウンに住む中学2年生の日常を描いた『エイジ』、妻を死なせた父と息子のかかわりを描いた『とんび』、人生のどん底で自殺を考えた息子と父との関係を描いた『流星ワゴン』など、多くを執筆している重松清氏の小説は、家族、地域社会、学校生活など、等身大の生活をとおして、現代の問題を描き出し、大きな反響を呼んでいます。その作品の多くが映画化・ドラマ化され、さらに多くの人の心に訴えています。

吉川英治文学賞を受賞した『十字架』も、「いじめ」を真正面からとらえた作品として、大切な内容になっています。原作を読んで、ぽろぽろ涙が出たことから、映画化を決意したという五十嵐監督は、茨城県筑西市をロケ地に選び、地元の子どもたちを集めて「いじめのワークショップをおこない、地元の人々とプロジェクトを立ち上げ、本作の製作に取り組みました。中学生や小学生の自殺がニュースで頻繁に流れる今日、しかし、学校でのいじめの実態はなかなか把握できず、自殺を防ぐことが出来ていませんが、この映画から、見つめるべき多くの視点が浮かび上がってきます。


物語

藤井俊介(小柴亮太)、中学2年生。学校ではフジジュンと呼ばれている。いつもニコニコしてあまり話さないので、みんなからはヘラヘラしているように見られ、いじめの対象になっていた。呼び出されて別の部屋や体育館の用具室に連れていかれ、何人にも囲まれ、暴力やはずかしいことをされていた。

そして、フジジュンは自ら命を絶った。フジジュンの自殺は大きく報道され、学校の前や葬儀会場には多くの報道人が集まっていた。

フジジュンの遺書には、「永遠に許さない」といういじめをしたグループへの言葉の他に2名の名前が書かれていた。フジジュンと同じクラスの真田祐(ユウ)(小出恵介)と他のクラスの中川小百合(サユ)(木村文乃)の名だった。ユウには、「親友になってくれてありがとう」と書かれていた。また、ユリには、「迷惑をおかけしてごめんなさい」という言葉があった。

クラスメートは担任に引率され、葬儀に向かった。告別式の中で、ユウはフジジュンの父親(永瀬正敏)から、「親友なら、なんで助けなかった!」と厳しく問い詰められた。しかし、ユウはフジジュンの親友だった覚えはなかった。なぜ、フジジュンは、自分をなぜ親友だと言ったのか。

 十字架
(C) 重松清/講談社 (C) 2015「十字架」製作委員会


ユウとサユは高校生になった。しかし、フジジュンのために何もしなかった自分がなぜ親友と遺書に書かれたのか、まだ分からないでいた。ふたりは、重荷から逃れようと、東京の大学へ行くことを話し合っていた。

 十字架
(C) 重松清/講談社 (C) 2015「十字架」製作委員会


 

中学生の時代から、大人になり自分の子どもを産む年代になるまでの心の軌跡を描いた本作の中で、大人になった主人公を小出恵介と木村文乃が演じていますが、ふたりは中学生時代も演じており、若い中学生たちの中にあって、多少違和感があるのですが、若いときと成人してからを同年代のキャストで演じるのではなく、同じ俳優が演じることに、五十嵐監督のこだわりがあるようです。

「いじめ」について、いじめがあったときだけでなく、その後にも影響する人生という長いスパンで見ていく視点を大切にしたいと思いました。


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