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無音の叫び声

2016年 3月

 無音の叫び声

  • 監督・構成・編集・プロデューサー・撮影:原村政樹
  • 音楽:佐々木良純
  • 語り:室井滋
  • 朗読:田中泯、 木村迪夫、栗田政弘
  • 出演:木村迪夫
  • 配給協力:きろくびと

2015年 日本映画 2時間2分

  • 山形国際ドキュメンタリー映画祭2015公式上映作品

ドキュメンタリー映画「無音の叫び声」は、山形県上山市で農業を営む農民詩人・木村迪夫さんの人生を追った作品です。木村さんは、1935年、貧しい小作人の7人兄弟の長男として生まれました。戦争で父と叔父を亡くし、その後農業で一家を支えてきました。小説家になりたかったそうですが、農業は長時間働くので小説を書く時間はなく、1行でも2行でも書いていくことができる詩の世界を選びました。定時制高校に通うときに、仲間と詩集を出しました。

 無音の叫び声
(C) 『無音の叫び声』製作委員会


関東軍の兵士となり、戦後はシベリア収容所に送られました。帰国後は地域の青年団に入り、青年たちと演劇活動を始めました。諭世の中は民主主義の社会となり、希望が持てる時代となりました。東北の多くの農民がそうであるように、木村さんも東京に出稼ぎに出ました。それはお金を得るためでしたが、他の町を見てみたいという思いもありました。しかし、留守中の家族がいかに寂しい思いをしていたかということを知りました。失ったことの大切さを思い、出稼ぎに出ることをやめて廃品回収の仕事を始めました。

 無音の叫び声
(C) 『無音の叫び声』製作委員会


木村さんは、三里塚闘争のドキュメンタリー映画を撮った小川プロダクションを村に招きました。村に活気を与えたかったのです。三里塚の農民たちの闘争するエネルギーがどこから来るのかを知りたかった小川プロダクションのメンバーたちは、数年にわたって農民の生活を撮影するため、木村さんの居る牧野村に住み込みました。

木村さんは、また、遺骨収集の活動も始めました。叔父の遺骨を探すために、美しい珊瑚の島・ウェーキ島を訪れ、786柱の遺骨を集めました。「こんなきれいな島で、なぜ戦争があったのか」、木村さんは答えを捜し求めました。


 

映画の中では、木村さんの人生の折々に、彼の書いた詩が朗読されます。木村さんの人生は、苦労の多い人生でした。戦争で大切な人を失いました。木村さんの心には、彼らへの思いが貫きます。木村さんの人生を見ると、日本の歴史と重なります。戦争と平和、経済の問題など、いろいろなテーマが問題となって出てきます。

木村さんの人生や詩をとおして、日本の歴史を振り返り、さらに今後、どのような道を歩んだら人々は幸せになれるのか、問題提起の多い作品です。



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