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お薦めシネマ
奇蹟がくれた数式
2016年10月
THE MAN WHO KNEW INFINITY
- 監督・脚本:マシュー・ブラウン
- 原作:ロバート・カニーゲル
- 出演:デヴ・パテル、ジェレミー・アイアンズ、デヴィカ・ビセ、トビー・ジョーンズ
- 配給:KADOKAWA
2016年 イギリス 1時間48分
- トロント国際映画祭2015正式出品
インドがまだイギリスの植民地だった1900年代はじめに、驚異的な頭脳をもって現れたインドの天才数学者シュリニヴァーサ・ラマヌジャンと、彼の才能を見いだし世界に紹介したケンブリッジ大学教授・ハーディの、実話に基づくヒューマンドラマです。ラマヌジャンは若くして亡くなりますが、アインシュタインと並ぶ天才だと言われています。
物語
イギリス領インド。貧しい生活の中にあるラマヌジャン(デヴ・パテル)は、結婚したばかりの妻ジャナキ(デヴィカ・ビセ)と母を家に残し、職を探しに都市に出てきた。職探しに疲れて簡易宿泊所に帰ると、頭の中に浮かんでくる数式を書いていた。ある日、彼の能力が飛び抜けていることを感じている職員から、イギリスのケンブリッジ大学トリニティ・カレッジのハーディ教授(ジェレミー・アイアンズ)を紹介されたラマヌジャンは、勇気を出して、自分が解いた式をハーディ教授に送ることにした。
1914年、ラマヌジャンからの手紙を読んだハーディ教授は、そこに書かれた数式に夢中になった。だれも解くことできなかった数式が書かれていたからだ。これは世界的な発見になると、早速、ラマヌジャンをインドから大学に招こうと動き出す。
ケンブリッジ大学の門をくぐったラマヌジャンは、自分の数式を人々に発表できる場が提供されたことに心を弾ませていた。しかしラマヌジャンを迎えたのは、ハーディ教授の友人のリトルウッド教授だった。当のハーディ教授は、ラマヌジャンを見もせず握手もせず、簡単なことばをかわしただけで去ってしまった。なにかと世話をしてくれるリトルウッド教授(トビー・ジョーンズ)だったが、ラマヌジャンがインドとはまったく勝手が違うイギリスの生活に戸惑っていること、特にベジタリアンである彼が、教授たちの食堂では食べるものがなく、食生活に困っていることまでは配慮できなかった。
(C) 2015 INFINITY COMMISSIONING
AND DISTRIBUTION, LLC.
ALL RIGHTS RESERVED. (C) Richard Blanshard
ラマヌジャンは、次々に浮かんでくる数式をハーディ教授に伝えるが、証明が必要だと言われる。証明できなければ、ひらめいたすばらしい数式も、魔術や空想に終わってしまい、無学で階級のない彼を排斥しようとしている他の教授に認めてもらうことはできないと。ラマヌジャンは、神が与えてくださるものを証明することはできないと苦しみ、書いても書いても受け入れてもらえず、途方に暮れてやる気を失ってしまう。
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さらに、第一次世界大戦にイギリスが参加したことにより、市場で求めていた野菜が配給制となりまともな食事をすることができなくなる。その上、兵士たちから「自分たちは戦地に行くのに、お前はなぜ」と暴力を振るわれ、慣れない生活の支えとなっていた妻からの手紙が来なくなっていたのだ。次第に追い詰められていくラマヌジャンは、家族を犠牲にして来ているイギリスでの自分の存在に意味を見いだせなくなっていった。数学のことしか頭にないハーディ教授の目には、すっかりやせ細っているラマヌジャンの姿は映っていなかった。
ラマヌジャンが解いていくのは、理解できない数式の世界ですが、天から何かをいただいたように彼がすらすらと数字を書いていくうれしさは、こちらにも伝わってきて、おもしろさに心躍る思いがします。撮影は、実際に二人が出会い、議論を重ねていったケンブリッジ大学で行われました。重厚な建物や歴史を感じる教室や廊下、またニュートンが実際にここでリンゴが落ちるのを見たという庭があったりと、歴史的な環境はとても興味深く貴重で、ドラマの背景となっているケンブリッジのキャンパスも興味深い映像です。
植民地として支配される国の無学で地位のない若者と、支配する側の学歴と地位の高い教授たちの間で、互いを尊敬しあうラマヌジャンとハーディの友情の物語を、ぜひご覧ください。