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お薦めシネマ
彼らが本気で編むときは、
2017年 3月
- 脚本・監督:荻上直子
- 音楽:江藤直子
- 出演:生田斗真、柿原りんか、ミムラ、桐谷健太、田中美佐子
- 配給:スールキートス
2017年 日本映画 2時間7分
- 第67回ベルリン国際映画祭テディ審査員特別賞、観客賞受賞
『かもめ食堂』『めがね』と、独特の世界感を醸し出している萩上直子監督の新しい作品は、トランスジェンダーの女性を主人公にした、新しい家族の形を描いた物語です。身体の性と自分が感じている性が一致しないという苦しみ、さらに自分のことを周囲の人々に理解してもらえない苦み、セクシュアルマイノリティーの人々の2重にも3重にもなる苦しみを、日本でも主人公として取り上げる作品ができたことはうれしい限りです。
物語
(C) 2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会
小学校5年生のトモ(柿原りんか)は、恋多き母親ヒロミ(ミムラ)と二人で暮らしていた。たびたびあることだが、男性を追ってアパートを出て行ったヒロミは、今回も食事代を置いて出て行ったまま、戻ってくる気配はない。トモは、母親がいなくなるといつも頼っていた叔父のマキオ(桐谷健太」の家に向かった。
しかし、マキオのアパートは、今回は様子が違っていた。マキオはリンコ(生田斗真)という女性と暮らしていたのだ。リンコはやさしそうな人だが、何かが変だ。実は彼女は、身体は男性だが女性の意識を持っているトランスジェンダーの人だった。マキオとリンコの穏やかな生活に突然やってきたトモを、リンコはあたたかく迎えてくれた。きれいに整理された部屋、手作りのおいしい料理、やさしい振る舞いと言葉遣い。リンコの醸し出すやさしで、マキオの部屋は愛情あふれる家庭になっていた。
リンコは、今までに母親からもらったことのないような愛情を、リンコから感じはじめ、次第にリンコに親しみを感じていった。リンコもトモの世話をしながら、自分の中に母性が大きく開花していくのを感じていた。
リンコは、編み物が好きだった。周囲からの冷たい言葉に悔しい思いをするとたびに、リンコは編み物をして心を落ち着かせていた。そしてリンコは、ある目標に向かって編み物をしていることが分かった。時々訪れくるリンコの母フミコ(田中美佐子)にも大事にされ、トモは、リンコのことを次第に知っていった。
(C) 2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会
自分の身体と感情の不一致は、どれほど大きな苦しみか想像することは難しいのですが、自分の苦しみを受け入れ、普通に接してくれる人に出会ったとき、大きな安定を与えられるということが、リンコのやさしから伝わってきます。そして、やさしは、さらにやさしを生み出していきます。
リンコを演じる生田斗真君のまなざしや立ち居振る舞いが、心の中の深い思いを表現していて、トモやマキオと一緒にリンコの世界にどっぷりと浸り、心満たされるひとときでした。