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わたしは、ダニエル・ブレイク

2017年 3月

I, DANIEL BLAKE

 わたしは、ダニエル・ブレイク

  • 監督:ケン・ローチ
  • 脚本:ポール・ラヴァーティ
  • 美術監督:ファーガス・クレッグ、リンダ・ウィルソン
  • 音楽:ジョージ・フェントン
  • 出演:デイヴ・ジョーンズ、ヘイリー・スクワイアーズ
  • 配給:ロングライド

2016年 イギリス、フランス、ベルギー映画 1時間40分

文部科学省特別選定作品(青年・成人・家庭向き)

  • 第69回カンヌ国際映画祭パルムドール賞、パルム・ドッグ人道賞、エキュメニカル審査員賞 特別表彰
  • 第69回ロカルノ国際映画祭観客賞
  • 第64回サン・セバスティアン国際映画祭観客賞
  • 第29回ヨーロッパ映画賞作品賞ほか4部門ノミネート
  • 第19回英国インディペンデント映画賞主演男優賞、有望新人賞

社会の底辺で暮らす人にとって、福祉が救いになっているかというと、そうではない現実は、どこの国も同じようです。必死で生きているにもかかわらず、役所の窓口の官僚的な対応とか、手続きの複雑さとか、パソコンを使っての申請とか、外国人ということが壁となって、制度の隙間で苦しむ人々がいます。しかし、ギリギリの生活の中でも、隣で苦しんでいる人がいたら、気になって手を差し出してしまう。そんな人間の善意をいっぱいに輝かせている作品です。人間の尊厳とは何なのか、人の親切とはどういうことなのか……。ちょっとフーテンの寅さんを思い出しました。

カンヌ国際映画祭やベルリン国際映画祭で、数々の受賞をしているケン・ローチ監督の作品で、2017年は、長編映画デビュー50周年を迎える記念すべき年に日本公開となりました。

物語

愛する妻に先立たれ、ひとりで暮らすダニエル・ブレイク(デイヴ・ジョーンズ)は59歳。長い間大工の仕事をしていたが心臓発作を起こし、アパートで暮らしているものの、医者から仕事をしないようにと言われている。雇用支援手当を受けていて、継続の手続きに役所に来たが、たくさんの質問にうんざりしていた。数日後、就労可能なので、支援手当の支払いは中止という通知を受け取ったが、医者からは仕事はまだ無理と言われているのにと、憤慨して窓口に電話をかける。しかし、らちがあかない。

わたしは、ダニエル・ブレイク
(C) Sixteen Tyne Limited, Why Not Productions,
Wild Bunch, Les Films du Fleuve,
British Broadcasting Corporation,
France 2 Cinema and The British Film Institute 2016


職業安定所を訪れたダニエルは、求職者手当を申請しようとするが、申し込みはオンラインのみとあり、操作が分からず困ってしまう。パソコンに向かっている若者に教えてもらい、次の操作に進もうとするが画面が進まない。窓口の女性も手伝おうとするが、ひとりの人にかかわるなと上司から言われ、ダニエルのもとから去っていく。

そのとき、若い女性の悲痛な叫びが聞こえてくる。時間に遅れたので、給付金を受け取ることができず、さらに違反審査にかけると言われているのだ。二人の子どもを抱えてロンドンから引っ越してきたばかりで道に迷ったと訴えても、係の者は聞こうともしない。彼女の名はケイティ(ヘイリー・スクワイアーズ)。ダニエルは彼女を助けようとしたが、一緒に役所から追い出されてしまった。

荷物を運んでくれたダニエルに、ケイティは自分の身の上を語る。ケイティたちが住んでいるアパートはボロボロだったが、ダニエルは持ち前の腕で、あちらこちらを修理し、娘には木彫りのモビールを作ってあげたりと、彼女たちの面倒を見るようになる。ケイティは子どもたちにはなんとか食べさせていたが、自分の食べる分は削っていた。

わたしは、ダニエル・ブレイク
(C) Sixteen Tyne Limited, Why Not Productions,
Wild Bunch, Les Films du Fleuve,
British Broadcasting Corporation,
France 2 Cinema and The British Film Institute 2016


ある日、ダニエルはケイティをフードバンクに連れていく。長い列に並んでやっと番が来た。係の人に連れられ、たくさんの食品が並ぶ棚の前に来たケイティは、やっと救われたと涙を流しながら必要な物をカゴにいれていくが、係の人が離れたとき、空腹のあまり、人目を避けて缶詰めのふたを開けると、その場でむしゃぶりついてしまう。

 

「もう限界だ!」と叫び壊れそうになる母親に、じっと話を聞き、さりげなく手を差し出すダニエル。「君は何も悪くない。君は立派に頑張っている。君には未来がある。尊厳を失ったら終わりだ」とケイティを力づけるダニエルのことばが胸に残ります。



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