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笑う故郷

2017年 9月

THE DISTINGUISHED CITIZEN

 笑う故郷

  • 監督・撮影:ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン
  • 脚本:アンドレス・ドゥプラット
  • 音楽:トニ・M・ミル
  • 出演:オスカル・マルティネス、ダディ・ブリエバ、アンドレア・フリヘリオ
  • 配給:パンドラ

2016年 アルゼンチン、スペイン映画 1時間57分

  • 2016ヴェネチア国際映画賞主演男優賞受賞
  • 2016ル全鎮アカデミー賞最優秀脚本賞
  • ゴヤ賞2017(スペイン・アカデミー賞)最優秀イベロマロウ文化賞
  • ハイファ国際映画祭2016最優秀海外作品賞(イスラエル)
  • テッサロニキ映画祭2016観客賞(ギリシャ)
  • バリャドリード国際映画祭2016作品賞/脚本賞(スペイン)

「笑う故郷」を見て、聖書の中の「多くの人の心にある思いがあらわにされる」という言葉が浮かんできました。ルカ福音書2章の幼子イエスが神殿でささげられる場面に出てくる言葉です。律法の掟に従って、生まれた子を神にささげるためにヨセフとマリアが神殿にやってきました。その二人の前に、救い主の誕生を待ち望んでいたシメオンという老人が近づきます。その男の子が救い主であると悟ったシメオンは、幼子イエスを抱き、母であるマリアに向かってこう言います。「御覧なさい。この子は、イスラエルの多くの人を倒したり立ち上がらせたりするためにと定められ、また、反対を受けるしるしとして定められています。……多くの人の心にある思いがあらわにされるためです。」


物語

アルゼンチン出身の作家ダニエル・マントバーニ(オスカル・マルティネス)に、ノーベル文学賞が与えられた。その栄えある授賞式、最高の栄誉を受けたダニエルだったが、なんと彼は、受賞の直後に行われるスピーチの中で、「これは喜びより、作家としての衰退のしるしだ」と言ってしまう。集まった人々は、いったい何のこと???と思いながらも、拍手で彼をたたえた。

笑う故郷


ノーベル文学賞受賞後の彼には、さまざまなところからのオファーがあった。しかし、彼は、そのすべてを断り、社会との接点を閉じていた。受賞から5年が過ぎたにもかかわらず、今日も秘書が、ダニエルへの依頼の手紙の数々を読み上げていた。それらの依頼を断っていたが、そんな中に、彼の生まれ故郷サラスから、名誉市民の称号を贈りたいという手紙があった。若いとき、故郷を捨ててスペインにやってきたダニエルは、この40年の間、一度もサラスに帰ったことはなかった。ダニエルは拒んできた故郷に、なぜか帰ってみたいと思った。

スペインからアルゼンチンへと飛んだ。しかし、最初からアクシデント。飛行場から車で7時間かかる道で、タイヤがパンクし、いきなり野宿となった。

サラスの街に入ると、パレードが待っていた。しかし、乗ったのはオープンカーではなく赤い消防車、さらに道で彼を迎える人はまばら。到着したホールでは美の女王から「名誉市民」の称号を与えられ、さらに、彼の生涯を描いたフィルムが上映され、ダニエルは自分の人生に涙を流してしまう。そして「ノーベル賞よりも価値がある名誉なことで、この名に恥じぬようにこれからの人生を歩みます」と、ノーベル賞では言えなかったことを言い、故郷はいいなと思いはじめる。

笑う故郷


しかし、彼を歓迎することばかりではなかった。次々と災いが押し寄せてくる。彼を利用しようとしたり、若いときの恨みをはらそうとされたり、小説をとおして怒りを感じている人々の逆襲を受けた。なぜ、こんな目に遭わなくてはいけないのか。災難にとまどう彼は、次第に故郷の人々の思いを知るようになる。

そして、故郷を離れる最後の日に狩りに誘われた彼は……。

 

故郷の人々の歓迎と拒否に心が乱されるダニエル。彼は故郷での滞在で何を感じたのでしょうか。また、故郷の人々は、ダニエルに何を期待していたのでしょうか。喜び、尊敬、あこがれ、嫉妬、侮辱、さげすみなど人間の複雑な感情が渦巻き、それぞれの立場の人から見ていくと、なかなか奥深い作品です。



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