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星めぐりの町

2018年2月

 星めぐりの町

  • 脚本・監督:黒土三男
  • 音楽:羽岡佳
  • 出演:小林稔侍、壇蜜、荒井陽太
  • 製作:豊田市、映画「星めぐりの町」実行委員会
  • 配給:ファントム・フィルム

2017年 日本映画 1時間48分




テレビに映画に活躍するベテラン俳優の小林稔侍氏ですが、映画で初めて主役を演じた作品ということです。しっとりとした「蝉しぐれ」を作った黒土三男監督の、美しい日本の自然と日本人の心を描いた映画ができあがりました。


物語

豊田市の山里で、手作りにこだわっている豆腐屋があった。京都で修行した島田勇作(小林稔侍)は、朝早くから起き、時間をかけて豆腐を作っていた。豆腐作りの作業が終わると、それをトラックに載せ住宅地に行くと、主婦たちがトラックに集まってきた。値段は少々高いが味のいい勇作の豆腐は、主婦層ばかりでなく料理屋でも使われている。

星めぐりの町
(C) 2018 豊田市・映画「星めぐりの町」実行委員会


ある日、勇作のもとへ、警察官が男の子をつれてやってきた。政美(荒井陽太)という少年は、東日本大震災の津波で家族全員を失い、親戚を転々としていた。勇作の亡くなった妻の遠縁にあたるということから、勇作のもとへ連れてこられたのだ。

部屋の隅で、だまってうずくまっている政美に、どう接していいかわかない勇作だったが、政美が自分から食べ話すまで、静かに見守ることにした。勇作の娘の志保(壇蜜)も、勇作の思いを胸に政美を温かく見守った。

星めぐりの町
(C) 2018 豊田市・映画「星めぐりの町」実行委員会


トラックで豆腐の販売にでかけようとしたある日、勇作は政美に声をかけてみた。「いっしょに行くか?」 政美はうなずいた。政美の会話はあいかわらず少ないが、政美は勇作を信頼して、少しずつ変わっていった。やがて政美は、勇作のすることをじっと見て、豆腐の販売を手伝うようになった。

 

自然災害や戦火の中で、一瞬にして両親を亡くしたり、家族を亡くしたりというこどもたちは、世界にたくさんいることと思います。小さな胸をいため、その苦しみ、悲しみをどう受け止め、処理していいかわからない中、時間だけはどんどん過ぎていく。そんな中で、勇作のように受け入れてくれる大人がいれば、時間がかかっても解決していく力をこどもたちは持っているのだということを感じる作品でした。実際は、なかなかここまで寄り添えないような気がします。さっぱりとことばをかける志保の存在も、優しい思いに満ちていて、いいなと思います。

辛い出来事を思い出し涙を流す政美に向かって「だれの手も借りず、自分ひとりで歯をくいしばって戦わなくてはいけないときがある」と語る勇作のことばが心に残ります。



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