お薦めシネマ
万引き家族
2018年5月
- 監督・脚本・編集:是枝裕和
- 音楽:細野晴臣
- 出演:リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、城桧吏、佐々木みゆ、柄本明、樹木希林
- 配給:ギャガ
2018年 日本映画 120分
- 第71回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門パルムドール賞
2018年5月8日~19日まで、フランスのカンヌでは、第71回カンヌ国際映画祭が開催されました。コンペティション部門には世界各国から21作品が紹介されました。日本からは2つの作品が正式出品されました。是枝裕和監督の「万引き家族」と、濱口竜介監督の「寝ても覚めても」です。2004年、是枝監督が最初にカンヌ国際映画先に出品したのは、両親から捨てられた兄弟たちの壮絶な生きる姿をを描いた「誰も知らない」で、主役の柳楽優弥さん(当時14歳)が、日本人として初めて最優秀男優賞を授賞して話題になりました。2013年には、出産したとき病院のミスで取り違えた子どもをめぐる2つの家族を描いた、福山雅治さん主役の「そして父になる」を出品し審査員賞を受賞しました。是枝監督は、日本を代表する監督としてすっかり有名になりました。
そして、今年、是枝監督は「万引き家族」で、カンヌ国際映画祭の最高賞である「パルムドール賞」を授賞しました。家族のあり方をテーマにして作品を撮り続けてきた是枝監督の、集大成とも言える家族が描かれている作品です。
物語
東京のはずれに、ビルとビルの谷間にある崩れそうな一軒家があった。そこには、年金暮らしの老婆・初枝(樹木希林)が一人で暮らしていた。というのは、役所の年金リスト上の話。この狭い家に、実は初枝の他に4人が暮らしていた。父の治(リリー・フランキー)は工事現場で日雇いとして働いていた。母の信代(安藤サクラ)はクリーニング店でパートとして働いている。ふたりの間には、息子祥太(城桧吏)がいた。さらに同居している信代の妹・亜紀(松岡茉優)がいた。彼らは、祖母の初枝の年金を当てにしているが、治と信代の収入では暮らしていけず、生活のために足りないものは万引きをして手に入れていた。
(C) 2018『万引き家族』 製作委員会
(C) 2018『万引き家族』 製作委員会
治は祥太を連れてスーパーに行き、万引きのコツを教えた。ある夜、治と祥太のすばらしい連携プレーで欲しかったおやつを手にしたふたりは、商店街でコロッケを買い家路につく。しかし、家の近くにある団地の一階で、幼い女の子が外にいるのを見つけた。どうやら、家から閉め出されたようで、寒い中で震えていた。前にも、家を出されているのを見たことがある治は、温かいコロッケをその子に与え家に連れてきた。亜紀は、誘拐になると言った。ゆり(佐々木みゆ)という女の子の腕にやけどの跡を見つけた初枝がシャツをめくると、ゆりの身体には複数の傷やあざがあった。
信代は、ゆりを家に返すために治と一緒に家を出た。ゆりの家のある団地のそばまで来たとき、男女の言い争う声が聞こえてきた。「産みたくて産んだんじゃない!」という女性の声を聞いた信代は、そんな母親のもとにゆりを置くことはできないと、連れて帰る。
翌朝、治は工事現場に、信代はクリーニング店へと出かけていった。学校に行っていない祥太は、ゆりを連れて駄菓子屋へ向かった。祥太は、駄菓子屋の主人(柄本明)の目を盗んで、亜紀が欲しがっていたシャンプーを万引きする。「そのうち、お前にも教えてやるよ」と、祥太は小さな声でゆりに言った。ゆりを迎えて6人になった彼らは、極貧でありながらも、家族として絆を強めていった。
(C) 2018『万引き家族』 製作委員会
数か月後、祥太はテレビを見ていて驚いた。「ねえ、あれ、ゆりじゃない?」祥太の声を聞いた治と信代は、画面の中にゆりを見つけた、「やばいよ、やばい!」。
映画を見終わって、「人の幸せなんて、外からはまったく判断できないぞ!」と叫びたくなりました。
祥太とゆりの子役の城桧吏君と佐々木みゆちゃんは、オーディションで選ばれました。城桧吏君の、ゆりを守ろうとするキリリとしたまなざし、佐々木みゆちゃんの悲しげな瞳が印象的です。親の虐待を受けているゆりを守ろうとする安藤サクラさんの顔は、映画の後半に向かっていくにつれて次第に変わっていきました。それは、予期せぬことや辛いことが起きても、すべてを神のご計画の中にあることと受け取っていかれた聖母マリアのやさしさだと思いました。