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ブレス しあわせの呼吸

2018年8月

BREATHE

 ブレス しあわせの呼吸

  • 監督:アンディ・サーキス
  • 脚本:ウィリアム・ニコルソン
  • 作曲:ニティン・ソーニー
  • 出演:アンドリュー・ガーフィールド、クレア・フォイ、トム・ホランダー、ヒュー・ボネヴィル
  • 配給:KADOKAWA

2017年 イギリス映画 118分

文部科学省特別選定 一般映画 青年・聖人・家庭向き

  • 第71回ロンドン映画祭オープニング作品
  • 第42回トロント国際映画祭出品

1950年代に、ポリオウィルスに感染して首から下が麻痺して動かなくなり、人工呼吸器がないと2分で死んでしまうという、病院のベッドで寝たきりの状態に突き落とされた28歳の男性が、妻と友人の努力と知恵によって、車イスに乗ってどこへでも移動できるようなるという、今では当たり前の道を切り開いていった夫婦の実話にもとづくドラマです。「ブリジット・ジョーンズの日記」「エリザベス」などの名作を生んだアンディ・サーキス監督が、ご自分の両親の姿を描き出しました。動かない体となった父親を演じるのは、「ソーシャル・ネットワーク」「アメイジング・スパイダーマン」「沈黙」など、個性的な役を演じてきたアンドリュー・ガーフィールドです。


物語

若い男性たちの羨望の的だが、結婚をゆるされる男性は現れない、双子の兄の目にかなわなければね、とうわさされていたダイアナ(クレア・フォイ)。美しく愛深いまなざしのダイアナを一目見て虜になってしまったロビン(アンドリュー・ガーフィールド)は、財産がないにもかかわらず彼女にアタックし、友人たちの祝福を受けて結婚する。

 ブレス しあわせの呼吸
(C) 2017 Breathe Films Limited, British Broadcasting
Corporation and The British Film Institute.


紅茶の仲買人として、ロビンはダイアナとともにケニアを訪れていた。ダイアナが妊娠し、幸せに満ちあふれた日々を送っていたふたりだが、ある日、パーティー会場でロビンが突然立てなくなり、病院に運ばれた。病気は悲惨だった。ロビンはポリオに感染しており、首から下は動かなくなり、自分では呼吸できず、あと数ヶ月の命だと宣告される。ロビンは人工呼吸器につながれ、話すこともできず、寝たきりの生活が始まった。

ダイアナは男の子を産んだ。名前をつけてほしいが、声を出せないロビンに聞くことはできない。ダイアナは息子に、ジョナサンと名付けた。ダイアナとジョナサンは、ベッドに寝たままのロビンとともに故郷のイギリスに帰った。専門病院で人工呼吸器につながれたままのロビンは、かすかな声をふりしぼり「死にたい」と繰り返す。ダイアナは必死でロビンを励まし、自分たちの家で過ごすことができないかと考える。「わたしがなんとかする」と、ダイアナは看護婦から人工呼吸器の使い方を教わり、反対する医師の声を降り切って、ロビンを退院させる。人工呼吸器につながれた患者が並び、ただ生きているだけの病院とは違い、家庭には、幼いジョナサンの声が響き、ダイアナの家事をする音が聞こえていた。声も出せるようになったロビンは、ダイアナの双子の兄(トム・ホランダー 二役)、友人たちの訪問を受け笑顔を見せる。

 ブレス しあわせの呼吸
(C) 2017 Breathe Films Limited, British Broadcasting
Corporation and The British Film Institute.


家庭で生活するロビンを訪ねた友人たちは、ロビンの姿を見て驚くが、これに刺激され、もっと快適にできるのではないかと考えるようになる。体の中で数センチだけ動かせる頭の横に板を取り付け、だれかを呼びたいときに頭を少し動かすとベルが鳴るようにした。人工呼吸器は壁のコンセントにつなっているのでベッドを動かすことができない。友人で大学教授のテディ(ヒュー・ボネヴィル)は、人工呼吸器を改良し、乳母車からヒントを得たロビンのアイデアを生かし、人工呼吸器を車イスに乗せた。こうしてロビンは、固定されたベッドから動くことができるようになった。車イスに乗ったロビンは庭に出ることができ、驚く友人たちに囲まれて生きる喜びを味わっていた。ダイアナはさらに考えを進めた。車を改造して、車イスが乗るようにしたのだ。夢は大きくなり、スペインに行ってみたいとロビンはダイアナに告げた。

 ブレス しあわせの呼吸
(C) 2017 Breathe Films Limited, British Broadcasting
Corporation and The British Film Institute.



 

首から下を動かすことができない、さらに、呼吸も自分ではできない、という生きていくのが絶望的になってしまう崖っぷちに立たされるような状態になったら……。いろいろな可能性が用意されている現代であっても、立ち上がることができないでしょうと思います。まして、1960年代の医療環境の中で。ロビンを支え、「死にたい」を「人生は冒険だ」に変えたのは、妻のダイアナでした。ダイアナを演じたクレア・フォイが、女性のしなやかさ、豊かさ、柔らかさを感じさせ、ステキでした。彼女の優しく包み込む愛によって、ロビンは卑屈になることなく生きていくことに喜びを感じていきます。車イスの横で、幼かった子どもが育っていくということも、ロビンを素直にさせたように思います。

車イスに乗ったロビンの姿は、人工呼吸器を扱う学会に集まった医師たちを驚かせ、彼らの価値観を覆していき、世界中の人工呼吸器につながれた患者たちに変化をもたらしていきます。この映画をとおして、愛と希望と知恵が生んだすばらしい世界を体験した思いです。


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