お薦めシネマ
きらきら眼鏡
2018年9月
- 原作:森沢明夫『きらきら眼鏡』(双葉文庫)
- 監督:犬童一利
- 脚本:守口悠介
- 音楽:神村紗希
- 出演:金井浩人、池脇千鶴、古畑星夏、安藤政信
- 配給:S・D・P
2018年 日本映画 121分
- 第21回上海国際映画祭正式出品
生きる力をどこから得るかをテーマに、しみじみとした映画ができました。素朴な人柄の主人公「明海」を演じるのは、新人の金井浩人さん。生きていくの大丈夫かしら…と思う力のなさが重なり、新鮮さを感じる作品となりました。
物語
駅の係員として働く立花明海(金井浩人)は、力なく日々の仕事をこなしていた。高校時代からの恋人を失ってからなかなか立ち直れず、生きる元気が出てこないのだ。
仕事が休みの日、古本屋に立ち寄った明海は、『死を輝かせる生き方』というタイトルにひかれてその本を購入した。読みながら「自分の人生を愛せないと嘆くなら、愛せるように自分が生きるしかない…」ということばに心が留まった。そこには「大滝あかね」という名の名刺がはさんであった。
明海は、この本をその人に返さなくてはと思い、名刺の会社に連絡をし、本を返すために出会うことにした。約束の場所である喫茶店にあらわれたのは、静かだがニコニコとした素朴な女性(池脇千鶴)だった。彼女の職場は、産業廃棄物処理施設だった。あかねは「ゴミは生きているあかしだ」と言った。「人生を愛するということがわからない」とあかねに語った明海は、その後たびたびあかねと出会うようになった。
あかねは「わたしはきらきら眼鏡をかけるようにしている」と明海に伝えた。きらきら眼鏡は見たものを輝かせる眼鏡だという。笑顔は、あかねが努力しているあかしだった。というのも、あかねには、わずかな余命をかかえていた恋人・木場裕二(安藤政信)がいた。
裕二を見舞った明海は、いのちの終わりを迎えている人の苦しみと向き合い、彼を支えながら、自分は打ちのめされることなく生きていくため、あかねは独特の方法を見つけ生きていることを知った。
同じような重さを抱えていたからこそ、通じあうものを感じる二人。愛する人の死を受け入れていくために、静かに時を過ごすことの大切さを、静かに語りかけています。