お薦めシネマ
ガンジスに還る
2018年10月
- 監督・脚本・プロデューサー:シュバシシュ・ブティアニ
- 作曲:ダジダール・ジュネイド
- 台詞:アサド・フセイン
- 出演:アディル・フセイン、ラリット・ベヘル、ギータンジャリ・クルカルニー、ナヴニンドラ・ベヘル
- 配給:ビターズ・エンド
2016年 インド映画 99分
- 2016年ヴェネチア国際映画祭ビエンナーレ・カレッジ・シネマ部門 エンリコ・フルキニョーニ賞
- 2016年ユネスコガンディーメダル
- 2017年インドナショナルフィルムアワード スペシャルメンション作品賞・主演男優賞
- 2018年釜山国際映画祭アジアの窓部門正式出品
- 2017年ニューヨーク・インド映画祭スペシャルメンション主演男優賞
- 2017年シュトゥットガルト・インド映画祭観客賞
- 2018年インディー・ミーム映画祭観客賞
- 2017年ウズール国際アジア映画祭クリティクス・チョイス賞
- 2018年フィルムフェア賞脚本賞
- 2017年ワシントンD.C.南アジア映画祭主演男優賞
- 2017年ジャグラン映画祭新人監督賞、主演男優賞
生も死も受け入れる母なる河、ガンジス。人生の終わりが近づき、どのように自分の死を迎えるのかを意識し、考え、行動に移すことは、そうできることではありません。インドの人口の8割を占めるヒンドゥー教徒たちは、自分の死期を悟ったら母なるガンジス河のほとりの「聖地」と呼ばれる場所に移動し、平安な死を迎えるための時を過ごす習慣があるようです。住み慣れた場所や家族から離れ、死はひとりで迎えるということでしょうか。日本人とは、人生に対する考え方が違うのかもしれません。今、「終活」ということばがはやっている日本の人々にとって、自分の死についてどう考えるか、示唆に富んだ映画です。
物語
高齢のダヤ(ラリット・ベヘル)は、息子のラジーヴ(アディル・フセイン)、息子の嫁のラタ(ギータンジャリ・クルカルニ)、孫娘のスニタ(パロミ・ゴーシュ)と暮らしていた。ある日、不思議な夢を見て死期の訪れを感じる。そして、家族の前で、ガンジス河の湖畔にある聖地バラナシへ行くと宣言する。家族が反対しても、ダヤの考えは変わらない。突然の父親のことばにとまどうラジーブだが、父親をひとりでいかせるわけにはいかず、一緒にバラナシへと向かう。
ガンジス河に着くと、ダヤは祈りをささげ、バラナシの「解脱の家」という施設に入る施設にはいろいろな決まりがあるが、最後に「解脱しようとしまいと、滞在は最大15日まで」と書かれていた。15日を過ぎたら、「あの世へ行くも帰宅するもあなたの自由だ」と言う。
(C) Red Carpet Moving Pictures
ダヤは、インド各地からバラナシに来た人たちと接しながら、生活になじんでいく。一方ラジーヴは、父の暮らしが心配でしかたない。
ダヤは、夫婦でここに来たが先に夫を見送ったというヴィムラ(ナヴニンドラ・ベヘル)と知り合う。彼女はここに18年滞在しているのだと言う。ヴィムラは「死は心からやってくる」と言う。ヴィムラと語り合う中で、ダヤの思いは深くなっていく。
(C) Red Carpet Moving Pictures
最期の場所としてパラナシを選んだダヤも、バラナシを選んだ父に反発しているラジーヴも、人生の終わりや家族との別れについて考えていきます。日本には、最期を迎えるために「バラナシ」に行くという方法はありませんが、そういう場所に行かなくても、人生の閉じ方を考える時をもつことは大切だと思います。