お薦めシネマ
選挙に出たい
2018年12月
- 監督・撮影・編集:ケイヒ
- 音楽:アレッサンドロ・アポローニ
- 出演:李小牧
- 配給:きろくびと
2016年 中国・日本映画 78分
- 2017年北京国際映画祭中国外国合作長編部門出品
- 2017年山形国際ドキュメンタリー映画祭日本プログラム部門出品
- 2017年マカオ国際映画祭ドキュメンタリー部門出品
- 2018年座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバルコンペティション部門入賞
2015年4月、新宿区の区議会選に立候補した李小牧氏は、1960年に中国・湖南省で生まれ、1988年に来日した。新宿・歌舞伎町で、外国人観光客に飲食店などの案内をしている。日本に来て20年が経ち、“歌舞伎町案内人”として知られるようになった。ヤクザにも刑事にも顔を知られるようになった李氏が、外国人の代表として外国人のために働きたいと、立候補したのだ。多くの日本人は政治に関心を持っていず、投票率がきわめて低い中で、李氏は、なぜ帰化までして立候補したのだろうか。
はじめは「本気か?」と思われた。当選すれば外国人として初めての議員となるので、名声を求めて立候補したのではないかとも思われた。挑戦だった。次第に本気になっていったが、中国からは中国を捨てた「売国奴!」と言われた。日本人からは「国に帰れ!」と言われ、居場所を無くしたと感じたこともあった。選挙活動の中で李氏がメディアに取り上げられはじめると、民主党が推薦のシールを貼って欲しいと言ってきた。「選挙が始まる前にしてくれたらいいのに」と思った。なにせ、後一日しかない時期だったからだ。
この映画を監督したのは、北京の大学で博士課程で学んでいるケイヒ。学業の中で、李氏を追い、彼の動きについていくことは大変だったことだろう。共通の友人を介して、2014年9月に初めて李氏に会い、選挙に出馬することを知っておもしろい人と思った。その翌日からカメラで李氏を追った。次のように言っている。外国人の目線から見たニッポン、日本の民主主義のこと、少数派のことを世界に伝えたかったと言う。国家関係とか、国民問題とか、若者が選挙に行かないとか、映画の中にはいろいろな問題が入っている。監督の色を出すというより、見た人が考えて欲しい。
試写会の後で語るケイヒ監督(左)と李小牧氏
中国で3回上映会を開いた。なぜ、日本で中国人が嫌われ、日本人は中国人を差別するのか。中国で生きる自分たちの基準を持って、日本で生きるのはダメだ。郷に入っては郷に従え。地元の風習を学んで欲しいので、中国人に見て欲しい。また日本人にも見てほしい。日本は投票率が低い。投票率の高さはよい政治を示す。
いろいろな政治の映画があるが、編集している段階で、映像をそのまままとめていくのがよいと思った。
中国には、一般市民にいまだに選挙権が与えられていない。日本のように、中国でマイクを持って路上で話すことはできないらしい。外国人が日本人とどう融合していくのか考えて欲しい。
李氏の熱い思いと行動力には、感服します。中国ではすべての国民に選挙権がないということを思うと、日本に住むわたしたちに選挙権があることを自覚し大切にしなければと思います。これだけ外国人が増えている今、李氏の出馬を追ったこの作品は、日本人にさまざまな問題を提示しています。