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新聞記者

2019年7月

 

 新聞記者

  • 監督:藤井道人
  • 原案:『新聞記者』望月衣朔子著(角川新書)
  • 企画・製作・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
  • エグゼクティブプロデューサー:岡本東郎
  • 音楽:岩代太郎
  • 出演:シム・ウンギョン、松坂桃李、本田翼、高橋和也、西田尚美、北村有起哉、田中哲司
  • 配給:スターサンズ、イオンエンターテイメント

2019年 日本映画 113分


「国民に真実を届けたい」という新聞記者の思いは、国家権力の前でもろくも崩されていきました。かつての戦争の時代だけでなく、今も、です。映画「新聞記者」は、東京新聞の社会部の記者・望月衣塑子さんが書いた『新聞記者』からインスバイアされた作品で、権力とメディアの問題は、今の政治と重なって見えてきます。この映画の登場人物の口を借りて、訴えているような衝撃的な内容です。真実を知らせるために命を賭ける新聞記者と、自死した先輩のために危ない道を行く若い内閣官僚の二人が、国家と組織に対しての個人の態度を問いかけてきます。


物語

ある夜、東都新聞社会部のFAXに、大学新設計画にまつわる極秘文書が送られてきた。真っ黒に塗りつぶされた大きな目を持った羊の絵を表紙にした匿名からのFAXを受け取った吉岡エリカ(シム・ウンギョン)は、新しい大学の計画にもかかわらず、その認可先が文科省ではなく内閣府であることに疑問を持つ。これは、誤報を促すものなのか、それとも内部リークか。上司の陣野(北村有起哉)から書類を受け取った吉岡は、早速取材を始める。

 新聞記者
(C)2019『新聞記者』フィルムパートナーズ


内閣情報調査室(内調)の職員である杉原拓海(松坂桃李)は、妻・奈津実(本田翼)の出産を間近に迎えていたが、もんもんとした日々を送っていた。外務省から内閣府に出向しているエリート官僚の道を歩んでいる杉原だったが、現政権を安定して維持するために、世論のコントロールをするという今の任務は、国民のために働きたいという彼の信念とは裏腹のものだった。上司の内閣参事官・多田(田中哲司)の言葉に疑問を感じながらも、有能な官吏として仕事をこなしていた

ある日、外務省時代の上司で、杉原にいろいろと教えてくれた神崎(高橋和也)から、携帯に電話がかかってきた。つい数日前、一緒に酒を飲んで楽しい思い出話をしたばかりだったが、神崎の声に不安を感じた杉原は、「待ってください!」と何度も叫ぶ。しかし神崎は「俺たちは、一体、何を守ってきたんだろうな」という言葉を残して、音信が途絶えた。

神崎に迫っていた吉岡は、彼の自死のニュースを見て衝撃を受ける。新聞記者だった吉岡の父も、政府の不正融資について書いた記事が誤報扱いされ、自殺に追い込まれたのだった。杉原もまた、神崎の死をとおして、官僚としての生き方に疑問を持つ。家族にも言えず自ら命を絶たなくてはいけなかった神崎は、一体何を負わされていたのだろうか。

 新聞記者
(C)2019『新聞記者』フィルムパートナーズ


神崎がFAXを送ったのではないかと考えた吉岡は、神崎の通夜に向かったが、そこで遺族に付き添っていた杉原と出会う。「私は神崎さんが亡くなった、本当の理由を知りたい!」と杉原に訴える。

 

女性記者を演じるシム・ウンギョンの演技は迫るものがあり、彼女の一途なまなざしや服装から、どんどん引き込まれていきました。エリート官僚の仕事と将来の道・家族との間で苦しむ松坂桃李、彼を追い込んでいく上司の田中哲司、新聞記者といえば登場する北村有起哉、緊張の連続の中で優しさを与える本田翼と西田尚美、すばらしいキャスティングでした。今の政府に目を見開くためにも、ぜひ、ご覧ください。


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