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Fukushima 50(フクシマフィフティ)

2020年 3月

 春を告げる町

  • 監督:若松節朗
  • 脚本:前川洋一
  • 原作:門田隆将『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』
  • 音楽:岩代太郎
  • 特撮・VFX監督:三池敏夫
  • 出演:佐藤浩市、渡辺謙、吉岡秀隆、火野正平、平田満、篠井英介、佐野史郎、ダニエル・カール、安田成美、富田靖子、津嘉山正種、吉岡里帆、中村ゆり
  • 配給:KADOKAWA、松竹

2020年 日本映画 122分


激しい揺れの中、福島第一原発1・2号機の中央制御室では、当直長である伊崎(佐藤浩市)の怒鳴り声が響きます。「落ち着いて! 訓練したとおりにやるんだ!」。しかし、すぐに中央制御室は真っ暗になり、あちこちから「SBO!」の叫び声が。SBOとはステーションブラックアウト(Station Blackout)の略で、原子力施設の電源がすべて失われた状態を意味します。電源が確保されなければ、原子炉を冷やすことができず、冷えなければやがて原子炉が溶解していきます。チェルノブイリの10倍の事故となり、半径300kmに放射能が放出され、首都圏を含んだ東日本全体に及びます。「東日本は壊滅する!」という危機的状況を避けるために、原発の作業員たちの戦いが始まります。

 Fukushima 50
(C) 2020『Fukushima 50』製作委員会


 Fukushima 50
(C) 2020『Fukushima 50』製作委員会


たびたび襲う大揺れの中で、次々と襲いかかる悪い出来事、それは放射能との命がけの戦いでした。放射能と作業員たちの必死の戦いの他に、本店と呼ばれる東京電力の幹部や、政府・総理という現場と中央との戦いでもありました。一方で、何が起きているかわけが分からない中で、夜中に避難を強制された周辺の住民たちとの戦いでもありました。

 Fukushima 50
(C) 2020『Fukushima 50』製作委員会


2011年3月11日から、テレビの画面をとおして見た福島第一原発の水素爆発のときの白い煙や、自衛隊ヘリコプターによる空からの水の散布の映像を思い出します。

電源がなくなり、メルトダウン(炉心が溶ける)を防ごうと、死を覚悟して建て屋に行く必要が出たとき、一瞬考えたのちに自分たちがこの原子炉を守る、国民を守るんだと使命感に燃えて「俺が行きます!」「僕が行きます!」と次々に手を挙げます。重装備をして出発する決死隊を見ながら、宮沢賢治の「グスコーブドリの伝記」を思い出しました。恐ろしい寒い気候を防ぐために火山島を爆発させる必要があり、それを実行するためにはどうしても一人が犠牲になる。その選択の前で、若いブドリとブドリの先生であるクーボー大博士やペンネン技師とのやりとりです。
「先生、それを私にやらしてください。どうか先生からペンネン先生へ、お許しの出るようお言葉をください。」
「それはいけない。きみはまだ若いし、いまのきみの仕事に代われるものはそうはない。」
「私のようなものは、これから沢山できます。・・・」
「その相談は僕はいかん。ペンネン技師に話したまえ。」
クーボー博士から相談を断られたブドリは、ペンネン技師のもとに行きます。
「それはいい、けれども僕がやろう。僕は今年もう63なのだ。ここで死ぬなら全く本望というものだ。」
「先生、けれどもこの仕事はまだあんまり不確かです。・・・先生がお出でになってしまっては、あと何とも工夫がつかなくなると存じます。」
こうして、ブドリは一人島に残り火山島を噴火させます。

 

瞬間瞬間に起こる1秒を争う出来事の中で、人は何を考え、どう判断するのか。まさに目を離すことができない2時間でした。こんな恐ろしいことが起き、人びとの生活や人生を狂わせてしまったにもかかわらず、原発は存在し続けています。大きな地震が来る高い確率の中で、同じようなことが起きないとは言い切れません。

あの日、福島第一原発の中で何が起きていたのか。最悪の状態を防ぐために命を賭けた作業員50人の姿を、身近な問題としてご覧ください。


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