お薦めシネマ
聖なる犯罪者
2020年12月
CORPUS CHRISTI
- 監督:ヤン・コマサ
- 脚本:マテウシュ・パツェヴィチュ
- 音楽:ガルぺリン・ブラザーズ
- 出演:バルトシュ・ビィエレニア、エリーザ・リチェムブル、ルカース・シムラット
- 配給:ハーク
2019年 ポーランド、フランス映画 115分
- 第92回アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート
- 第44回トロント国際映画祭公式上映
- 第22回ポーランド映画賞11部門受賞
- 第55回シカゴ国際映画祭 主演男優賞受賞
聖職と言われている司祭職をとおして、人間の中にある聖と俗、善と悪、真実と虚像を垣間見る、怖く、しかし引き込まれてしまいます。ポーランドで起きた実話に基づいた作品です。
物語
20歳のダニエル(バルトシュ・ビィエレニア)は、殺人罪で少年院に入っていた。少年院でおこなわれるミサに熱心にあずかり、神のもとで働きたいと願うようになるが、指導するトマシュ神父(ルカース・シムラット)から「前科者は聖職には就けない。他にも道はある」と言われていた。仮退院となり、身元を引き受けてくれた村の製材所に向かう途中、教会を見つけ、ひかれるように聖堂へと入っていった。
聖堂に入るとマルタ(エリーザ・リチェムブル)という少女が祈っていた。彼女からの質問に、ダニエルはつい「司祭だ」と答え、カバンの中に持っていた、聖職者しか身につけることができないローマンカラーの服を彼女に見せる。この嘘から、彼の運命が変わっていく。
(C) 2019 Aurum Film Bodzak Hickinbotham SPJ.- WFSWalter Film Studio Sp.z o.o.-
Wojewodzki Dom Kultury W Rzeszowie - ITI Neovision S.A.- Les Contes Modernes
トマシュ神父と名乗ったダニエルを新しい司祭と間違えた教会の主任司祭は、アルコール中毒の治療のために教会を離れるということでダニエルに手助けを願い、留守の間の教会を託して出かけてしまう。
ダニエルは、村人たちに嘘だと言うことができずに、次第に村人からいろいろなことを求められることに、少年院で見た司祭の仕草を思い出しながら、どうにか司祭の職務を果たしていく。
この村には、数年前に起きた自動車事故の悲劇が、村人たちの心に傷となって深く刻まれていた。ある男性が運転する車と、6人の若者たちが乗った車が衝突し、7人全員が亡くなったのだ。飲酒運転が原因で、若者たちが命を落としたと信じた村人たちによって、加害者の遺族は、村八分になっており、教会に行くことも許されず、埋葬もされていなかった。彼らの間で、いったい何があったのか。この村に来たときから、ダニエルは、気になっていた。
(C) 2019 Aurum Film Bodzak Hickinbotham SPJ.- WFSWalter Film Studio Sp.z o.o.-
Wojewodzki Dom Kultury W Rzeszowie - ITI Neovision S.A.- Les Contes Modernes
司祭としての自分を頼りにし、喜んでくれる村人たちの中で、やがてダニエルは司祭としての自分に自信を持ち始めていく。
神の前で、彼はどのように立っていられるのか、考えてしまいます。押さえられない欲望、つきあげてくる悪、信じてくれる人を裏切ることの辛さと、真実を告白することの勇気。では私は、何を大切に生きているのか。いろいろと考えさせられる作品でした。また、司祭職が秘跡であるということの重さを、改めて感じさせられました。