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たゆたえども沈まず

2021年 5月

 たゆたえども沈まず

  • 監督:延藤隆(テレビ岩手)
  • 構成・編集:佐藤幸一
  • 撮影:田中 進
  • 音楽:馬場葉子
  • ナレーション:湯浅真由美
  • 企画・製作:テレビ岩手
  • 配給宣伝アドバイス: ウッキー・プロダクション

2021年 日本映画 103分


東日本大震災から10年を迎え、「テレビ岩手」が記録し続けた10年間の被災地の人々の様子を、劇場用映画として企画・製作しました。

被災地の現地テレビ局でしか撮ることのできない、住民の中で生活している視点で、深い傷から立ち上がっていく人々の心の復興を追っていきます。


揺れているテレビ岩手の局内、山に向かって走る人々。恐ろしいあの日が、よみがえってきます。被災地から遠い地で、テレビの画面で見ていた津波の様子を見て、当時のことを思い出して辛くなります。しかし、10年たった今、同じ映像を見ても、当時とは違った視点で見ている自分がいることに気づきました。

避難所で、おばあさん。涙ぐみながら。「お父さんは大波にさらわれてしまいました」

避難所となった体育館で、おじいさん。「生きる地獄になるんじゃないかな。見通しがつかないね。」

 たゆたえども沈まず
がれきの街を歩く女性 (C) 2021テレビ岩手


人々の心が落ちかない、そんな中、地震から5日目に、三陸鉄道は、電車を走らせました。被害は多かったのですが、運転手や乗客に犠牲者は出ませんでした。地域住民の足として、鉄道マンは団結します。走る1両を見て、手を振るおばあさんたち。復興への大きな一歩です。

三陸海外のおいしい食材を使った料理で宿泊客をもてなす宝来館。裏の山に逃げて、宝来館にいた職員はみな無事だったが、お休みだった3人は犠牲となりました。おかみは「流されたけれど、ちょっとだったの。生きる、生きると思ったの!」と言います。

陸前高田の高台にある一軒の家。津波はここまで来ませんでしたが、近所の高齢者に避難を呼びかけに行った夫は、津波にのまれ帰ってきませんでした。当日、隣町に行っていて翌日家に戻ったという妻は、夫の死亡届を出すことができず、6年たってやっと心の整理ができました。

 たゆたえども沈まず
夫に宛てた手紙 (C) 2021テレビ岩手


大槌町の商店街で自転車店を営んでいた人、震災で結婚式を挙げることができなかったカップル、地震から数日後に家のあった場所に来て、コンクリートの土台だけとなった近所を見て「ここの人たち、死・・・」と声をふるわせる男性。

 たゆたえども沈まず
奇跡の一本松 (C) 2021テレビ岩手


 

あの日から10年。辛い、悲しい、何をどう受けとめてよいのか分からない、途方に暮れる。そして、10年経っても「自分の心が揺らいでいる」。弱い人間。しかしけっして沈まない。「あなたたちのために頑張る」「へこたれない!」と応える、一生懸命生きてきたたくましい人間の記録です。

3.11とその後の歩みをけっして忘れないために。岩手の人々と、同じ時を過ごしたわたしたちの10年を忘れないために。



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