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アリの町のクリスマス

『アリの町のクリスマス』表紙

  • 文:女子パウロ会
  • 絵:狩野 富貴子
  • 定価:本体1,200円+税
  • 天地28.3cm×左右20.9cm 上製  26ページ
  • ISBN978-4-7896-0820-6  C8793



イエス・キリストは、いったいどんなところへ、どんな人びとのために、お生まれになったのでしょうか。

 キリストの誕生の知らせを、天使たちによって真っ先に告げられた人びとは、その地方で夜通し羊の群れの番をしていた、貧しい羊飼いたちでした。
 そうです! キリストは、すべての人のため、特に、もっとも貧しく、社会から目を向けられないような人びとのために、生まれてくださったのです。

 今回ご紹介するクリスマスの新刊絵本『アリの町のクリスマス』は、まさにこの羊飼いたちのように貧しく、助け合いながら生きていた人びとが、クリスマスの喜びをともに分かち合っていく福音の物語です。

 主人公は、2015年ローマ教皇フランシスコから「尊者(生涯が英雄的、福音的な生き方であったことを公認する)」と宣言された北原怜子さん。もっとも貧しい人びととともに生きて、愛と祈りの奉仕のうちに一生を終えた、やさしいお姉さんです。

 ある時、怜子さんが暮らす家に、サンタクロースのようなおじいさんが訪ねてきました。
 そのおじいさんは、ポーランド人の修道士、ゼノさんでした。ゼノさんは怜子さんの帯にロザリオが下げられているのを見つけると、さっそくお願いごとをします。
 「アナタ、オイノリ タクサン タノミマス。
  カワイソウナヒト タクサン タクサン イマス」

 そして怜子さんは、戦争で住む家や仕事をなくした人びとが廃品回収業で助け合って生活をしているアリの町のことを知ったのでした。
 「こんな ちかくに、こういう くらしを している ひとたちがいたのに、
  わたしは なにも しらなかった…」

 12月、再びゼノさんは怜子さんのところへやってきました。
 「クリスマスニ、タノシイコト タクサン ヤリマス、
  コレ コドモタチ ヨロコビマス。テツダッテ クレマスカ?」
 怜子さんは、すぐに答えます。
 「はい! いつから はじめましょうか」

 わたしたちは、何を決断するのも、その心の準備に時間がかかるものです。しかし神さまは、サンタクロースのようなゼノさんを通して、怜子さんのこの返事のための準備の時間をしっかりと与えてくれたのです。

『アリの町のクリスマス』中ページ


 怜子さんは、寒い冬であることも気にならないほど、アリの町の子どもたちと、真剣に、愛をもって向き合います。子どもたちも、怜子さんとの練習に、いっしょうけんめい、うきうきと向き合いました。
 廃品回収業での暮らしは、決して裕福ではありません。学校では、いじめられ、つらい思いをしていた子どもたち。しかし、クリスマスへ向けて、大人も、子どもも、力をあわせて準備をします。

 そして迎える、クリスマス。準備のはじめにはぼんやりとしていた子どもたちの顔が、はっきりと喜びに輝きます。いっしょうけんめい練習したクリスマスの聖劇を披露する、子どもたちの顔に笑顔がはじけます。なんてうつくしい、光のあふれるクリスマス!


 ──わたしたちは、今年も、クリスマスを祝い、喜びます。
 今年はきっと、すこし様子が違うクリスマスになることでしょう。
 しかし、怜子さんとアリの町の、大きな喜びを、何度も思い出してくださいね。
 アリの町におとずれた、光の主、イエス・キリストの誕生を、わたしたちも抱きしめることができます。

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