第1回:人権(1)人権は、このわたしが保障するもの
<第1部、第3章、4 人権、a 人権の重要性(152-154)>
白い布をくくりつけた棒切れを振りながら、洞窟の中から出てくる子どもの映像を見たことがあります。たしか、沖縄戦の一場面だったと記憶しています。「わたしを殺さないで!」その叫びが白い布には込められています。まさに、生存権の主張です。しかし、圧倒的な武器による攻撃にさらされたその叫びは、なんと弱々しいことでしょう。銃を構えた強者がその子に向けた銃口を下さない限り、その子の生存は危ういままです。
人権は主張されなければなりません。気づいてもらうために、「わたしを殺さないで!」と意思表示しなければなりません。人権は、他者から保障されないと現実のものとはならないのに、人権を主張することすらできない人が多くいます。人権の主張に対する反感や無関心があるのも事実です。反感をもつ人の中には、人権の主張は反社会的行為だと感じている人もいます。社会秩序を守るために、個人の生存や自由が脅かされる社会とは、いったい何なのでしょうか?そもそも、人権を主張しなくても、人権が保障される世の中でなければなりません。
繰り返しますが、人権はそれ自体なんの力もなく、他者が保障することでしか現実のものとはなりません。ですから、わたしたち一人ひとりには、人にどのような権利があるのかを学び、それらを保障することが求められているのです。